明治33年開校の埼玉浦和第一女子高等学校は、現在まで120年以上にわたり、埼玉県女子教育のトップリーダーとして、国内外で活躍する多くの卒業生を輩出してきた。「日本一忙しい女子高生」の呼び名の通り、生徒は勉強・部活動・委員会活動の全てに全力で打ち込み、お互いに助け合いながら、高校生活を過ごす。先輩から受け継がれている「一女の友は一生の友」の言葉は、校風を象徴する言葉だ。DONGRIは2023年の4月から導入した(「ジーニアス5辞書セット」「ジーニアス英和・和英辞典」を採用)。この春リリースした「ダッシュボード機能(※1)」も含めて、DONGRIの多様な機能をアイデア豊かに使いこなす英語科の須田 康子先生に、その活用法を聞いた。
(※1)ダッシュボード機能の詳細はこちら
仲間と学び合う雰囲気を高める
浦和第一女子高等学校には、仲間と一緒に学びを深める土壌がある。1学年では、定期考査で優秀な成績を収めた生徒を「学び合いマスター」と称し、その勉強の仕方や難しい問題の解き方を共有することで、助け合いながら学習を深めていこうとする雰囲気を大切にしているそうだ。
この取り組みを参考に、須田先生は「DONGRIマスター」を企画した。DONGRIの「ダッシュボード機能」にある「学習概要」を使えば、生徒各自の辞書の利用状況をExcelに書き出すことができる。今回須田先生は、DONGRIの利用時間と調べた回数がトップの生徒にインタビューを行い、それを英語通信に掲載することで、辞書活用のヒントを学年全体に共有しようと考えた。
英語通信からの引用(生徒名を加工して掲載)
「オフラインでも使えるので、ギガを気にしなくて済みます」というtipsや、「多義語は共通点を見つけて覚えることが増えました」などの学習実感は、他の生徒も取り入れやすい内容だ。次の英語通信で、須田先生は「調べた単語部門」の「DONGRIマスター」をインタビューすることにしている。
学習履歴データの活かしどころ
生徒の学習履歴データを指導に活かせる点はICT教材の大きな特徴だ。「DONGRIマスター」は、利用頻度の高い生徒の活用法を全体に共有するという、学習データの活かし方の好例だ。
その他に、須田先生は学習履歴の活かしどころを次のように話してくれた。
「本校では、毎週末の課題として、英語の単語確認テストをGoogleフォームで配信しています。生徒が満点をとるまで何度も回答できるように設定しています。最初はできなくても、生徒は何度も問題に取り組み、力を伸ばしていきます。そこでの取り組み回数の分布を、英語通信で共有しています。生徒には分布を見ながら、自分の学習状況を客観的に振り返ったり、何度も取り組んだということを励みにしたりしてほしいと考えています。」
上記と同じように、須田先生は「ダッシュボード機能」を使ってDONGRIの活用状況の分布を書き出し、次のように英語通信で生徒に共有した。
学習結果ではなく、生徒の学習過程や粘り強さを分布として共有することで、その後の意欲付けにつなげられるのは、ICT教材を使った実践ならではだと感じた。
「7回単語に出会うと覚えられる」
浦和第一女子高等学校では、DONGRIでの辞書引きの平均回数が、4月:67回、5月:79回、6月:113回と、月を経るごとに頻度を増している。入学後から夏休みまでは辞書を引く習慣づけを目標に、学年で足並みをそろえて取り組んだというが、それはどのように行ったのだろう。
同校はBYODで端末を導入しているが、まずはDONGRIの管理者画面から生徒一人一人が初回設定を完了できたかを確認しながら、導入を円滑に進めていった。そのうえで、EAST EDUCATIONのフリー教材を使って基本的な操作を確認したり、定期的に授業で辞書を引く機会を設けたりしながら、1学年全体で辞書を引く習慣を浸透させていった。
授業では、つい最近もhistoric/historicalの違いを調べたり、important/significantの「類語比較」を紹介したりしたことがあったという。
important / significantの「類語比較」 『ジーニアス英和辞典 第6版』より
他にもshopperの語彙を学習した際、「他の『客』を表す語を調べてみよう」と問いを投げ掛け、和英辞典で調べる活動も行った。大型画面で辞書画面を共有し、辞書の見方を少しずつ広げていったことが伺える。
先日は期末考査の誤答分析の時間を設けた。生徒は教科書や単語帳、文法書を片手に、自分の誤答を正確でより自然な表現に改めながら学習を進めていく。語彙の使い方や細かなニュアンスの違いを調べる際にはDONGRIで辞書を引く生徒も多い。そこでの学習のねらいを、須田先生は次のように話す。
「私個人のモットーとして、生徒には『7回単語に出会うと覚えられるよ』と伝えています。また、単語は意味だけでなくフレーズの中で使えるようにと、例文を見ることを意識させています。生徒は1つの単語と教科書で出会い、単語帳で出会い、多読の学習で出会い、DONGRIで出会います。それぞれの用例を行ったり来たりしながら、何度も調べるうちに単語を覚え、細かなニュアンスの違いを知り、語彙が増える実感をもってほしいなと思います。」
同校の辞書引き回数の多さは、多くの例文に触れながらフレーズの中で語彙の使い方を学ぶという学習観が浸透していることの表れだと感じた。
学習過程の共有とアイデアの循環が学びの雰囲気をつくる
辞書引きの習慣が浸透した今、須田先生が夏休み後に目指すのは、辞書引きを復習に活かすことだという。DONGRIには、しおりをつけた見出し語をタグ付けして整理する機能がある。「タグ付けを頑張っている生徒もたくさんいるので、どのように分類しているのか、タグを付けた単語をどのように復習に活かしているのかについても、インタビューしたいと思っています」と須田先生は語ってくれた。須田先生が自身のアイデアを問いとして投げ掛け、そこで集まった生徒のアイデアは、別の生徒の活用に活かされていく。そうしたアイデアの循環が、浦和第一女子高等学校の学び合いの雰囲気の醸成につながっていることを強く感じた。