高崎商科大学附属高等学校・国語科の神戸沙織先生より「生徒の表現力や語彙力を高めるために、国語辞典をより活用させることはできないか」との相談を受け、神戸先生と当社が協力して授業の計画を練りました。その成果の一つとして、当社カスタマーサクセス担当の平松和旗が普通科1年1組で行なった「表現を磨く出前授業」の様子を紹介します。
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生徒の書く意欲を高めるために
生徒は文章を書くことに抵抗はなく、感想文やスピーチ原稿など、それなりの量の文章を書くことはできる一方で、学級日誌に生徒が書いた「~を頑張りたいです」「~ができてよかったです」などの文章には、表現の幼さも感じられました。そこで、授業づくりの目標を「学級日誌など、普段書く文章の中にも瑞々しい表現を取り入れられるよう、生徒の書く意欲を高めること」としました。
具体的には、「相手に思いを伝えるための語彙や表現を工夫し、自由に使いこなす面白さを実感できる」ことを出前授業のねらいとし、「最近自分の心が動いた瞬間」を伝える文章を書きあげ、国語辞典の使用やグループワークを通して、表現を磨く授業づくりを行いました。
表現を磨くための手立て
『明鏡国語辞典』には、類語やより大人びた表現に言い換えられる品格語が豊富に掲載されています。掲載語のうち、神戸先生は生徒が文章の中でよく使用する語を一覧にまとめ、ヒントカードとして配布しました。一覧中の語句にはDONGRIの辞書ページへのリンクが貼り付けてあり、クリック1つで該当する辞書画面を表示することができます。 生徒は、自分が書き上げた文章と一覧にある語句を見比べて言い換えられる語を探し、辞書を活用して表現を練り上げていきました。
授業の流れ
①導入として、同じ場面や物事をさまざまな視点や文体で書いた例文を示し、表現によって伝わる印象が変わることを確認する。
②生徒が撮影した「心が動いた瞬間」の写真を題材に、その瞬間の状況や気持ちを表現する文章を書き表す。
③国語辞典の活用やグループワークを通じて文章を校正し、表現を磨いていく。
④クラス全体で文章を鑑賞し、コメントを書き合う。
語彙を吟味する生徒たち
生徒はグループでのアドバイスも積極的に行い、最後の鑑賞の時間にはクラスメイトの文章に感想を書いて伝え合いました。クラスメイトからの感想を楽しみに自分の席に戻る生徒の姿を見て、「心が動いた瞬間」をクラスメイトと共有することは、協働して学ぶ集団づくり にも効果的だと感じられました。
以下の生徒の記述からは、辞書を参考にしながら使用する語彙を吟味した過程を見取ることができます。
「少ない」→「及ばない」
「まるで」→「さながら」
「考える」→「頭をひねる」
「行った」→「足を運んだ」
ある生徒は「悔しい」の類語に「残念」を見つけたのをきっかけに、自分の思いに合う言葉を探し続け、「何よりもみじめで仕方がなかった」という表現にたどり着きました。この表現は辞書には載っていませんが、類語を眺めたり、検索を続けたりする過程でふと心に思い浮かび、今の自分の思いを言い当てる言葉だと気づいたそうです。彼は「数学で難しい問題が解けた時のような気分だった」と今回の学習を振り返りました。
生徒たちに生まれた変化
学習感想からは、「国語辞典は、知らない言葉の意味を調べるだけでなく、類語や大人びた表現を調べるときに役立つ」「自分が書いた文章表現を磨く際に国語辞典を役立てたい」などの生徒の気づきが見られました。
授業後の意見交流会に参加した先生からは、「理科の授業や探究学習でも一覧表(ヒントカード)を活用し、発表資料を作成する際にDONGRIを利用したい」との言葉をいただきました。相手や状況に合わせて「書く」こと、そこでの表現を見直し練り上げることは、国語の授業に限らず、多くの学習場面で大切な過程だと気づかされました。
最後に、生徒の表現への意欲が高まったエピソードを紹介します。 出前授業の後、学級日誌には次のような生徒の文章が見られたそうです。
「学年末考査の順位表が返ってきた…(中略)…春休みから努力します → 精進します。」
「教室の荷物が減少していくとともにもの悲しさを感じますが、新たなスタートに向けて気持ちを切り変えていきたいです。一年生の終わりを告げる桜が凛々しく咲いていたのを見て、私もこの桜のように立派になりたいと思いました。」