【辞書コラム㉗】辞書の使い方

2冊目の辞書としての『グランドセンチュリー英和辞典』:受験用単語集として辞書を使うには

#初級

サムネイル画像:2冊目の辞書としての『グランドセンチュリー英和辞典』:受験用単語集として辞書を使うには

前回のコラムで、DONGRIにラインナップされている様々な英和辞典を紹介しました。今回は、その中から今年の3月に発売された『グランドセンチュリー英和辞典(第4版)』(以下GC4)について詳しく見ていきます。GC4は、辞書コラム22で紹介した『コアレックス英和辞典』と同規模の、高校中級向けの辞書です。高校生の日常的な英語学習から難関大学の入試まで対応しますので、高校初級向け、上級向けの英和辞典に追加して使う2冊目の英和辞典として最適です(皆さんが使っている辞書のレベルは、前回のコラムにあるチャートで確認してください)。

「重要語索引」を使いこなして単語学習を効率的に

1回目のコラムで、辞書を引いたときにまず重要度ランク(星印)を確認することをお話ししました。高校では、中学校よりもたくさんの単語を学びますので、辞書で調べた単語をすべて覚えようとするのではなく、重要度ランクをチェックして、「今すぐ覚えるべき単語かどうか」を意識することが大切ですね。

DONGRIのGC4では、「知らない単語の意味を調べる」という基本的な辞書の機能から一歩進み、重要度ランクごとに単語をまとめた「重要語索引」がついています。「索引」タブをクリックし、「重要語索引」を選んでください。

GC4の重要語索引

重要語索引では、重要度ランク(星印)にもとづいた「中学学習語」「高校学習語」「高校生に必要な語」の3種類の「重要語リスト」と、大学入試でよく出てくる語を2段階で示した「大学入試頻出語リスト」の2種類のリストを見ることができます。それぞれの特徴をみていきましょう。

英語を学ぶ上で基本となる「重要語」

「中学学習語」(Aランク:星印3つの語)は、中学校で学ぶ最も基本的な約1320語が含まれています。高校生の皆さんなら、すべての語の意味が分かるだけでなく、英語を書いたり、話したりするときに正しく使えることが目標です。もし、このランクの語で知らない単語があれば、最優先で覚えましょう。

大学受験を控えた皆さんなら、このレベルの語は易しく感じるかもしれませんが、英検などの資格試験や難関大学の独自試験など、記述式の英作文が出題されたり、面接形式のスピーキングテストを受ける人は、意味を知っているだけでなく、正しく使えることが必要になります。

「高校学習語」(Bランク:星印2つの語)は、高校の教科書や定期試験レベルの約2590語です。高校1年生の皆さんには知らない単語もかなり含まれていると思いますが、難関大学をめざす高校生は、高校2年生までにこの中の多くの語の意味が分かるようにすることを目標にするといいでしょう。Bランクの語の中には、大学入試で頻繁に出題される語も含まれていますので、大学入学共通テストを含め、標準的なレベルの大学入試を受ける皆さんは、高校3年生の夏休みまでを目安に、このレベルの単語まで身につけることをおすすめします。とくに大学受験を控えた皆さんは、後でふれる「Exリスト」も確認し、Exランクに出ている語はとくに時間をかけて学ぶようにしましょう。

「高校生に必要な語」(Cランク:星印1つの語)は、難関大学の入試や英検2級~準1級レベルの資格試験に余裕を持って臨むことができるレベルの約3940語です。高校1年生の皆さんにとっては、このランクの語は今すぐ覚えるべき単語ではありませんが、英語を専門とする学部や難関大学をめざす人は、Exリストに含まれている語を中心に、大学受験までに身につければ安心です。

入試問題に基づいた「大学入試頻出語」

今お話しした3種類の重要語リストは、英語を学ぶ上でもっとも基本となる語をまとめたものです。高校ではBランクやCランクの語を中心に学ぶことになりますが、皆さんの中には数が多すぎてとても覚えられないと思う人も多いかもしれません。BランクとCランクの語を合わせると6530語もありますので、これを全部覚えることは、大学受験を控えた高校生でも無理な話ですし、ごく一部の最難関大学を受験する人を除けば、その必要もありません。

もっとも、重要語リストの中には、candy, hint, mailbox, melody(いずれもBランク)のように、カタカナ語や日常的に使われる名詞などですでに皆さんが知っている語や、ローマ字読みで意味が推測できる語も多く含まれています。これらの語は、英語の基礎を身につけるためには重要ですが、入試問題にはあまり出てきません。

一方、同じBランクの語でも、biological, perceive, point of view, shortage, side effectのように、資格試験や大学入試の難しめの長文でよく出題される語や、受験単語集にはあまり出てこないフレーズもあります。

GC4では、他の英和辞典でほとんど見られない特徴として、重要語とは別に、大学入試問題の分析結果に基づいて頻度の高い語を2段階に分類した独自のリスト(Exリスト)を作成しています。「索引」タブをクリックし、「重要語索引」の中から「大学入試頻出語 Ex1 (Ex2)」を選んでみましょう(Ex1のほうが、Ex2よりも入試での出現頻度が高い語です)。

Ex1のabsorb

Exリストは、BランクとCランクの重要語の中から、大学入試問題で出現頻度がもっとも多い語を1130語(Ex1)、その次に頻度が多い語を1180語(Ex2)選んだものです。先にふれた重要語のリストとは完全に独立していますので、Cランクの語がEx1に含まれたり、逆にBランクの語でもEx2に入っていることもあります。大学受験をめざす皆さんは、中学で学んだAランクの語を復習しながら、Bランク、Cランクの語の中からEx1、Ex2のリストに含まれる語を優先的に学んでいくことをおすすめします。

Aランクの語(1320語)、Ex1リストの語(1130語)、Ex2リストの語(1180語)を合計すると3630語となり、高校3年間の授業はもちろん、大学入学共通テストをはじめとした標準的な大学入試対策のスタートラインとして十分な単語を身につけることができます。なお、Exリストの詳細や活用方法は、「索引→この辞典について→Ex (Examination)マークを活用した入試語彙学習法」に出ていますので、ご覧ください。

Ex (Examination)マークを活用した入試語彙学習法

受験用単語集の落とし穴

皆さんの中には、辞書は単語の意味を調べるものであり、単語を覚えることが目的なら大学受験用の英単語集を使えばいい、と思う人も多いでしょう。受験用単語集は、入試によく出る単語を短時間でなるべく多く、効率的に覚えることに重点を置いていますので、少ない労力で単語量を増やすことができそうに見えます。

一方、受験用単語集には、大学受験をめざす高校生なら知っていて当然と判断した単語は載せていません。そのため、ある程度の単語を知っている高校生が、受験に向けて「穴を埋める」ためには最適ですが、とくに高校1、2年生のように単語をたくさん身につけようとしている人にとっては、基本的な単語が抜け落ちてしまうこともあります。GC4の重要語リストとExリストを組み合わせることで、英語が得意な高校生はもちろん、中学レベルの単語から身に付けたい皆さんでも無理なく単語力をつけることができます。

意外に思うかもしれませんが、受験用単語集でもっともレベルの高いものに出てくる語をすべて知っていたとしても、大学入学共通テストの英文に出てくる単語のうちの20%程度しかカバーすることはできません。10回目のコラムでもふれましたが、入試問題とはいえ、そこに出てくる語の多くは中学や高校の教科書レベルの基本的な語なので、辞書の重要語ランクを活用して基本をしっかりと身につけてください。

この記事の執筆者

関山健治(せきやま けんじ)先生写真

中部大学 准教授

関山健治先生

沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。

著書に『辞書からはじめる英語学習』(2007年、小学館)、『英語のしくみ』(2009年、白水社)、『日本語から考える!英語の表現』(共著、2011年、白水社)、『英語辞書マイスターへの道』(2017年、ひつじ書房)などがある。

執筆・校閲者として『ウィズダム英和辞典(第3版)』(三省堂)、『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』(小学館)、編集委員として『ベーシックジーニアス英和辞典(第2版)』などを担当。

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