サムネイル画像:第1回Qulmeeting!イベントレポート

第1回Qulmeeting!
イベントレポート

2023年7月29日、東京都渋谷区にあるイースト株式会社本社で、音読アプリQulmee初のユーザーイベント“Qulmeeting!”を開催しました。Qulmeeを授業で活用する先生5名に加え、アプリ監修者である京都外国語大学の安木真一先生が参加しました。本イベントは、Qulmee活用法の共有と、今後の機能強化に関する意見交換を目的としたものです。イーストは、「生徒の変化や頑張りの可視化を通じて、主体的に取り組む姿をより喚起したい」という先生方の思いを、今後の開発につなげていきたいと思います。今回は、当日の様子についてレポートします。

英語学習の「はじめの一歩」としての音読

 本イベント前半では、利用校の先生から授業でのQulmeeの活用法についてお話を伺いました。Qulmeeを使い始めた頃と、Qulmeeで音読練習を繰り返した後の音声を比較しながら、指導の工夫や生徒の成長について共有がなされました。

 まず、Qulmeeを導入してから3年目を迎える名古屋市立工芸高等学校・英語科の清水香名先生、山際裕子先生、加藤千恵先生による実践報告がありました。工業高校である同校は、普通科高校に比べ英語の授業回数が限られており、英語に苦手意識をもつ生徒も多い状況です。そうした中で、いかに生徒の意欲を高め、維持できるかという課題意識が、Qulmee導入の背景にありました。3名の先生方の具体的な工夫は以下の通りです。



英語が苦手な生徒に対する、スモールステップで進める音読指導 -清水香名先生

Qulmeeの活用法・工夫していること:
Qulmeeをいきなり生徒に与えても、始めは何を意識して発音練習すれば良いか分からず、発音の向上が見られなかった。そのため、「今日はカタカナ英語を英語らしく発音してみよう」「音と音のつながりを意識しよう」など、毎回1つテーマを決めて課題に取り組ませた。


Qulmee導入後の変化:
生徒一人で練習を進めることができ、家で30分ほど練習をして提出する生徒が増えていった。授業でのアンケートでは、「もっと発音が上手くなるよう頑張りたい」など、発音に対する意識が高まる様子が見られた。

名古屋市立工芸高等学校 清水香名先生

名古屋市立工芸高等学校 清水香名先生

音読は学習の一歩として有効な手立て -山際裕子先生

Qulmeeの活用法・工夫していること:
生徒へフィードバックを返す際に、必ず次回の目標を記している。 生徒へのコメントに「次はfの発音を頑張ろうね」など具体的なアドバイスを与える。イベント当日に共有された生徒の音声からは、細かい発音まで意識が行き届いている様子を聞き取ることができた。


Qulmee導入後の変化:
生徒らは、以前より細かい発音まで意識が向くようになった。 音読課題1つ1つにコメントを返すことはどうしても手間になるが、生徒の音声を聞くことでつまずきに気づきやすくなった。授業の組み立てが容易になり、結果的に手間が省けた部分もある。

名古屋市立工芸高等学校 山際裕子先生

名古屋市立工芸高等学校 山際裕子先生

 報告の中で山際先生は、「英語に苦手意識があり、学習を何から始めて良いか分からない生徒に対し、音読は一歩を踏み出すきっかけとして取り組みやすいもの」と話していました。先生方の指導の工夫が、生徒の学習の積み重ねから生まれる達成感や次の学習への意欲付けにつながっていることを感じました。



授業での音読練習を家庭学習に繋げる -加藤千恵先生

 加藤先生からは、Qulmeeで音読練習を始める前に行う発音指導について詳しい説明がありました。

指導方法:
音読に取り組む前に、原稿を見ながら音声を聴く時間を作り、音のつながりや消える音など、耳でどう聞こえているのかメモをさせる。 その後、メモしたポイントを意識しながら、音のつながりやイントネーションについて重要な部分を繰り返し発音練習する。部分的な練習と、通し練習を繰り返し、時に生徒を鼓舞しながら、練習を進めている。

名古屋市立工芸高等学校 加藤千恵先生

名古屋市立工芸高等学校 加藤千恵先生

評価の観点をルーブリックで明示する必要 ― 安木真一先生

 安木先生は、パフォーマンス課題として生徒が音読を提出する場面では、評価の観点を事前にルーブリックで明示しておく必要があるといいます。安木先生は課題を配信する段階で、語のつながりやイントネーションなど、評価する部分を予め設定しておくそうです。これを行うことで、複数の教師が指導する場合でも、音読の全体的な印象ではなく、より指導のねらいに即した評価を学年で足並みをそろえて行うことができます。また、生徒の側も、盲目的に練習を繰り返すのではなく、目的意識をもって課題に取り組むことができます。加藤先生のように、事前に音読のポイントを意識させる指導は、音読が苦手な生徒に対する手立てとしても、具体的な目標をもたせて生徒の意欲を高める手立てとしても、重要な過程なのだと感じました。

安木真一先生

京都外国語大学 安木真一先生

生徒の実態に合わせた学習活動を設定

 Qulmeeを今年度から導入した茨城県立守谷高等学校の横島先生からは、学力を問わず、多くの生徒が前向きに学習に取り組めるような学習活動の設定の仕方を紹介していただきました。

 特に生徒らは、自分で好きなように英文を編集できる「自主学習機能」を気に入っているそうです。中には好きなアーティストの英語の歌詞を音読し、先生に音声を提出する生徒もいます。与えられた課題だけではなく、生徒が自分の学力や関心に応じて主体的に学習に取り組む素敵な事例だと感じました。

茨城県立守谷高等学校 横島真澄先生

茨城県立守谷高等学校 横島真澄先生

 横島先生からは、「課題のリマインドを配信したい」「自動評価で採点された点数を、生徒にもフィードバックしたい」などの要望もいただきました。高頻度で利用する学校だからこその気づきを、今後の製品強化につなげていきたいと思います。

 先生方4名の発表は、以下のようにまとめられます。共通していたのは、「入学時の英語の学力を問わず、だれもが主体的に取り組むことのできる学習として音読を取り入れたい」という導入背景と、「Qulmeeを通じて、発音への意識が高まった」「授業と家庭学習を有機的に結びつけられた」「次の学習への意欲づけを図ることができた」という導入成果だったように感じます。先生方の工夫された授業の実践発表を聞き、我々の製品が微力ながら貢献できたことを肌で感じ、非常に嬉しく思いました。

発表まとめ

今日の積み重ねを、明日の学習意欲へつなぐアプリを目指して

 イベント後半では、Qulmeeの機能強化に関するディスカッションを行いました。当社で考案した「先生の業務に関する機能」「生徒の学習に関する機能」「評価に関する機能」の3カテゴリ・全8種の機能について、イーストから提案し、先生の率直な感想をもとに話し合いました。

 例えば「複数の課題文で共通して苦手傾向にある発音を生徒に表示するのはどうか」とイーストから提案したときのこと。先生方からは、「音素の口形やフォニックスの練習動画が表示されると、どのように改善すれば良いかが明確になる」「効率的に学習が進められるのは便利だが、苦手ばかり表示されると生徒は自信を落としてしまうのではないか」「誤りのログは集積しつつ、『苦手な発音』として表示するのではなく、『今週の注目ワード』のように表示すれば、自信を落とさず練習に取り組めるのではないか」など、現場経験に裏打ちされた、多くの意見が挙がりました。

ディスクリプションの様子1

 最後に、検討した8種類の機能の優先度を先生方に話し合っていただきました。

 中でも先生方が最も必要だと結論付けたのは「評価」のカテゴリに属する機能でした。「評価の履歴から生徒の変化がより見取りやすくなると、個に応じた指導をより効率的に行える」「生徒自身が音読練習の積み重ねを実感できるUIになると、さらなる意欲づけにつながる」などの意見が挙がりました。中にはイーストから提案しつつも、「これはいらない」とばっさり切り捨てられた機能案もありました。ですが、先生とイーストが開発の方向性を揃えられたことは、大きな成果でした。あっという間の3時間のディスカッションが、果たしてどんな機能強化に結び付くのかワクワクする思いを共有して、Qulmeeting!は閉会しました。

ディスクリプションの様子2

 イーストでQulmeeting!の振り返りを行った際、「Qulmeeを活用した音読の積み重ねから、生徒が意欲を高められていることが伝わりうれしかった」「生徒の頑張りや変化をより見取りやすい画面に改修できれば、継続的な学びをサポートできる」などの意見が挙がりました。EAST EDUCATIONには、「今日の学びを明日へつなぐ」という理念があります。Qulmeeting!での先生の声を新しい機能につなげていけるよう、開発を進めていきたいと思います。

イベントを終えて

リアルイベントは久しぶりの開催でしたが、利用者の先生から製品の意見を開発メンバーも含め直接聞くことができ、とても貴重な経験となりました。「今日の学びを明日へつなぐ」ために、現場での利用場面を意識しながら、今後も製品づくりに励んでいきたいと感じました。参加していただいた先生方、遠いところから足を運んでくださり、ありがとうございました!

教育コンテンツ事業部 佐藤和奏

教育コンテンツ事業部 佐藤和奏