中央大学杉並高等学校_辞書アプリDONGRI事例

中央大学杉並高等学校 ×辞書アプリDONGRI

 中央大学杉並高等学校は、中央大学との高大一貫教育を特色とする進学校だ。創立50周年を迎えた際、教育宣言として「共育と共創」を掲げた。「人をかたちづくる豊かな知は、誰かに教え込まれるものではなく、みずから考え、学びあうなかで、共に育まれていくもの」との思いが込められている。
 DONGRIは2022年度に導入したばかりだが、当社で利用率を確かめると、毎月多くの生徒が辞書を活用して学習に臨む様子が見て取れた。辞書活用に関わる指導の秘訣を先生に聞いたところ、控えめに「特別なことはしていない」とのこと。教育宣言の通り、誰かに教えられたわけでもなく、自主的に辞書を活用して自ら考える姿が浮かび上がってきた。そこで、DONGRIを利用する1年生を対象に、辞書活用の実態を尋ねるアンケート調査を行った(有効回答数310)。結果からは、ICTの利活用で学習を効率化できるメリットは積極的に取り入れつつ、一方でネットから得た情報はしっかりと吟味したうえで判断する、今を生きる生徒たちのたくましい姿が明らかになった。

生徒にとって、人気の辞書とその使いどころとは

 2022年度、同校では『ウィズダム英和辞典』『同 和英辞典』『新明解国語辞典』『三省堂全訳読解古語辞典』『全訳 漢辞海』の5辞書を利用している。学習に有効だと思う辞書を、生徒に順位付けしてもらった。回答は以下の通りだ。

アンケート結果

回答から、中央大学杉並高等学校では、特に英語系の辞書を有効活用する生徒が多いこと、また3位に国語辞典を選ぶ生徒が多いことが分かる。「1位に選んだ辞書はどんな点が学習に有効か」の質問に対する生徒の回答は、次の通りだ。

アンケート結果

 生徒の回答から、授業や自主学習を問わず、様々な場でDONGRIを活用する様子が伺えた。また、単に単語の意味を調べるだけでなく、その周辺知識までをしっかり読み込んだり、他者に情報を伝える責任感から表現の正確さや豊かさを意識したりする生徒が多いことは特徴的だと感じた。

なんでもスマホで調べられる時代に、辞書は必要か

 ネットで簡単に情報を集められる時代だ。英単語や古語の意味を無料で調べ、解説してくれるツールもたくさんある。ネットでの検索に慣れ親しんでいる生徒も多いに違いない。そうした中、どれだけの生徒が、辞書を学習に必要なツールだと感じているだろう。「何でもネットで調べられる便利な時代の学習に、辞書や百科事典は必要だと思いますか?」に対する生徒の回答は、以下の通りだ。

アンケート結果

 グラフの通り、4分の3以上の生徒が「辞書は必要」と答えた。また、定義があいまいだったため、質問中の「辞書や百科事典」を紙辞書と想定した生徒も多く見られた。そのため、「不要だと思う」と回答した生徒の内、「紙辞書は重い」「かさばり、携帯性が悪い」など、紙の辞書のデメリットではあるが、同時に辞書をアプリとして端末に内蔵することのメリットである点を挙げる生徒は12人いた。

 上記を除いた「不要だと思う」の理由は、以下の二つに大別される。
 【不要派①】の理由は、「ネットが代替しているため、辞書は不要」という回答だ。後で述べるように、この理由を挙げる生徒の多くが「情報リテラシーがあれば」と留保を付けていたことは示唆的だ。(下線部は執筆者による)。

【不要派①】:ネットが辞書を代替しているから(30件)
・ だいたいのことはネットで調べることができ、辞書に載っていない用語なども検索することができるから。情報の真偽が怪しいことや専門的すぎることはヒットしないというデメリットを加味しても、ネットのほうが便利。
情報リテラシーがあれば、ネットの方が快適で素早く情報を手に入れられるから。
信用性がない情報についても多角的に吟味しリテラシーを育てることも大切な学習である。

 一方で、ネット時代にも「辞書は必要」とする生徒の多くは、その理由に「情報の正確さや信頼性」を挙げていた(110件)。その中でも、情報の受信者としてだけでなく、自らが発信者の側に立つ際を想定した、以下のような回答(【必要派①】)が特徴的だと感じた。

【必要派①】:出典の信頼性が情報発信時の自信や説得力につながる(24件)
・ インターネットに転がっている情報は何が正しくて何が正しくないかがわからないし、引用元が辞書だったら何かの発表の時でも説得性があるから。
・ 正確性を求められたり、公式に使えたりする根拠として、辞書は必要だと考えたから。

 上記からは、他者に情報を伝える際、そこでの情報は正しく信頼性の高いソースに依拠しているかどうかという点が、情報発信者としての生徒の自信や説得力につながる点を見て取ることができる。
【不要派①】の生徒の回答は、「情報リテラシーがあれば」と留保を付けていた。常に情報リテラシーに基づいた情報の吟味ができているか確証を得ることは難しいが、そうした不安を辞書の信頼性は担保してくれるという点で、辞書や事典の必要性を強調する生徒は多かった。

 また、【不要派②】の理由には、「ネットで検索する方が簡単で速いから」という回答が見られた。

【不要派②】:ネットで検索する方が簡単で速いから (24件)
・ ネットで調べると時間がかからず、スムーズに勉強できるから。
・ 専用のサイトを使うよりも検索バーに入力した方がサイトの読み込み時間よりも早いから。

 一方で、【必要派②】の理由には、「辞書の方がネットより速い」とする意見もあった。

【必要派②】:辞書の方が速い(8件)
・ いちいちいろんなサイトから最も有効な情報を選別するよりも一度にほしい情報を得ることができるから。
・ 世の中には情報がありすぎるので辞書や百科辞典といったしぼった物があっていいと思ったから。

上記の回答は、ネットは多くの情報にすぐにアクセスできるが、それがかえって学習上のデメリットに感じられる場面があることを指摘するものだ。「いくつかのサイトを見比べて確かな情報を得る」という情報リテラシーの基礎が定着している生徒の中には、かえってネット検索は時間がかかると感じている生徒もいるようだ。
 アンケートを集計する前は、「検索が速いのはネット」「じっくり調べられるのは辞書」という役割分担のような回答が多いのではないかと、筆者は予想していた。けれども、生徒の回答から、そうした単純な区分けが自明ではないことに気づかされた。また、必要派も不要派も、情報リテラシーの必要を強調する生徒が多くいたことが印象的だった。どちらの立場からも、情報収集の際にはその信頼性を吟味する過程を大切にしていることが見て取れ、感心した。
辞書引きの習慣や情報リテラシーが身に付いていることについて、英語科の大山先生は、次のように話す。

 辞書を使った活動等をたくさんしたわけではないのですが、エッセイなどを書かせる過程で、ネットの辞書ではなくてオーセンティックなものを使うように指導をしました。また、情報リテラシーと辞書の関連でいえば、正しい辞書の使い方のハウツーを学ぶことは大切です。けれどもそれ以上に、ネット上の情報をどのように扱うかということについての意識づけが重要だと考えています。

生徒にとって、DONGRIの有効な活用法とは

 中央大学杉並高等学校の国語科では、多様なジャンルから選ばれた課題図書100冊を3年間で読み、卒業論文を書く学習を行っている。また英語科では、様々なアクティビティを取り入れながら、教科書本文を繰り返し読む「ラウンドシステム」を導入している。インプットとアウトプットが緊密に結びつく学習に力を入れている点が、同校の特徴だ。

 辞書はそうした学習の中で、どのように有効活用することができるだろうか。「来年入学する後輩に伝えるようなイメージで、あなたの自由な意見を教えてください」と、1年生に質問した。

アンケート結果

傾向①②の回答からは、生徒が単語の意味だけでなく、類語や例文、他の単語との違いなどにもしっかりと目を配る様子が伺えた。また、情報源の信頼性に注意を向ける必要が、情報の受信者の立場からだけではなく、他者に情報を提供する側からも挙げられている点は、やはり特徴的なものだと感じた。

もう一つの傾向として、ICT教材との互換性を有効に取り入れようとする回答が見られた。

アンケート結果

大山先生によれば、例えば「論理・表現」の授業でも、英語で書くエッセイに関する資料をGoogle Classroomで配信しているという。下図のように、参考文献を読みながら、同時に単語の意味を確認することができるというのは、学習用端末の中に辞書が内蔵されていることのメリットだと言えそうだ。

配信教材とDONGRIのイメージ図

1つの画面の中で、左に配信教材、右にDONGRIの検索画面を表示するイメージ図
左は同校HPに掲載されている「高校生のための卒業論文ガイド」の「資料・先行研究の収集」に関わる内容

ICTを使いこなす生徒のたくましさ

 上記のアンケート調査から、中央大学杉並高等学校の生徒たちが、どのように辞書を活用しているかを具体的に見て取ることができた。特徴的だと感じたことは、以下の2点だ。

 1つ目は、生徒が情報収集をする場面だけでなく、他者に情報を提供する場面の責任をしっかりと感じた上で、課題に取り組んでいたことだ。そうした責任をしっかりと自覚しているからこそ、情報源が信頼に足るものか、表現は適切であるかといったことへの感度の高さが生まれるのだろう。また、情報の取捨選択の過程を適切に経るのであれば、ネットで情報を比較するよりも、辞書の端的な定義を読む方が速いという考えは新鮮だった。さらに、辞書があれば、自信をもって他者に向けた発表やレポートに取り組めるという意見にも納得した。レポート作成や発表の機会が、提出に終始するような単なる課題ではなく、生徒の主体的な取り組みとなっている様子が、回答からは強く感じられた。

 もう1つは、生徒が情報リテラシーを強く意識しながら、一方で教材のICT化によって効率化できる点は積極的に取り入れて、学習に取り組んでいたことだ。DONGRIを使うことで辞書引きの作業を効率化できた生徒は、単語の意味だけに終始せず、例文や類義語など、周辺知識にまでしっかりと目を配っていた。また、デジタルで配信された教材とDONGRIをうまく組み合わせて使用する様子も伺えた。

 アンケートを通じて、ICT化の波に乗りながら、一方でそれに溺れることなく情報を吟味して、自らの学習を主体的に切り開こうとする、生徒たちのたくましさを感じた。そして、そうした学習に日々励んでいる生徒たちの手元に辞書アプリDONGRIが開かれていることを、うれしく思った。
 アンケートに真摯に回答してくれた中央大学杉並高等学校の1年生のみなさん、ありがとうございました。

この記事を書いた人
教育コンテンツ事業部 平松和旗

教育コンテンツ事業部 平松和旗

中央大学杉並高等学校

導入時期2022年

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