静岡県立清水東高等学校 ×音読アプリQulmee

静岡県立清水東高等学校は、2023年に創立100周年を迎えた歴史ある学校だ。2004年から21年連続でSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けるなど、県内有数の進学校として知られている。
音読アプリQulmeeは、トライアル利用を経て2025年度から1学年での利用を開始した。Qulmeeの「音読教材を自由に登録できる」特性を活かして、利用開始当初から発音への意識をぐんと高める指導を行う英語科教諭・武村 真希先生にお話を伺った。

教科書準拠の音読アプリからQulmeeに切替えた背景は?

 清水東高校では2024年度まで、教科書出版社が配信する音読アプリを活用していた。同校では以下のような理由でQulmeeへの切替えに至ったという。

1.サポート対応はQulmeeの方が早く、困ったときにすぐに対応してもらえること。
2.誤発音・余計な単語の挿入・単語の読み飛ばしなど、フィードバックの項目が多く、生徒が練習段階で発音判定のフィードバックを得られること。
3.教科書準拠のアプリだと、プリセットされた英文を編集することはできないが、Qulmeeは、教師が意図した通りに英文を登録できること。

 特に「3.先生が英文を編集できること」の例として、チャンク(意味のまとまり)ごとにポーズを挿入できるQulmeeの機能が挙げられる。同校では、授業で使用するワークシートとして、教科書本文の対訳シートを配布している。この対訳シートは、英文がチャンクごとにスラッシュで区切られており、日本語の意味やそのまとまりを意識しながら、英文を戻らずに前から読む練習ができる教材だ。Qulmeeでは、教材登録時に「/(スラッシュ)」を使えば短いポーズ、「//」を使えば長いポーズを挿入できるため、武村先生はこの対訳シートの英文・和訳をそのままQulmeeに登録している。音読に充てる授業時間は限られるが、Qulmeeを利用することで、家庭でも先生の指導のねらいに即した音読学習を行うことが可能になった。実際に、生徒から提出された音声を聞いても、誤った箇所で区切って読む生徒はほとんどいないそうだ。教科書準拠の音読アプリはすぐに利用できる手軽さがあるが、Qulmeeでは英文を自由に加工でき、指導のねらいや後述する運用上の視点に即した課題を配信できることがとても便利だと、武村先生は話してくれた。

(左)対訳シート(右)Qulmeeの発音判定画面

(左)対訳シート(右)Qulmeeの発音判定画面

発音に意識を向ける指導の工夫とは?

 武村先生は1学年を担当しているが、早速生徒の発音への意識が高まっている様子を実感しているという。発音への意識を高めるために、どのような指導の工夫をされているのだろうか。

 武村先生は英語の初期指導として、発音記号の理解を深める学習に取り組んだという。具体的には、発音記号が表す音を確認したうえで、発音記号・品詞・単語の語釈(英語)・日本語訳を一覧化したボキャブラリーシートを配布した。生徒は発音記号などを頼りに、適切な語句のスペルを記入していく。こうした指導を通じて、英語の音を文字に結びつける学習を1年生の初期段階で行い、その後も新出単語を学習する度に取組んでいるという。

ボキャブラリーシート

ボキャブラリーシート

 また武村先生は、授業で扱う英文のインプット(内容理解)に留まらず、それをインテイク(内在化)させて、リーディングやリスニングの技能を高めてほしいと生徒に伝えているという。インテイクを確実に行うためには、生徒が教材文を音読し、誤った発音があればフィードバックを得てそれに気づけることが重要だ。そのため武村先生は、QulmeeのAI発音チェックに加え、コメント機能を活用してフィードバックを行っているという。

 コメントを返す上で配慮していることは、まず生徒の良い点を褒めるということだ。その上で誤った発音があれば、その語を具体的に挙げ、正しいアクセント位置や発音を具体的に伝えているという。個別のフィードバックは先生の負担も大きいように感じるが、武村先生は教科書本文を短く区切って配信することで、先生も評価がしやすく、効率的なフィードバックを実現されているそうだ。ここでも、Qulmeeの「英文を自由に変更できる良さ」が、運用上の視点からも生きているという。コメントを返した後の生徒の反応を伺うと、「先生は思った以上に自分の音読を聞いてくれている!」と生徒が感じているとのことで、以下のように話してくれた。

「生徒は『これで合っているかな』と、一抹の不安をもちながら音読練習をしています。だから『大丈夫だよ、伝わっているよ』と教師から伝えてあげると、とても安心するようです。」

 武村先生はフィードバックを通じて、発音の誤りへの気づきに加え、英語が伝わっているという安心感を、生徒に実感させている。提出した課題がしっかりと評価され、自分の良いところと伸びしろを具体的に伝え返してもらえることは、生徒の大きなモチベーションにつながっているように感じた。

音読を大切にする理由

 多くの英語学習アプリの中からQulmeeを採用するなど、清水東高校が特に音読を重視する背景には、どのような先生の願いがあるのだろうか。武村先生は次のように答えてくれた。

「英文を音読するスピードと同じ速さで、内容を正確に解釈する力を伸ばしてほしいと考えています。共通テストのような長い英文を時間内に読み切るには、返り読みをせず、英文を前から読んで意味を捉えられる力を、生徒には身に付けてほしいと考えています。英語を自然なスピードで前から理解する力を養うために、音読を通じた継続的なトレーニングはとても重要だと考えています。」

「日頃から『発音できない音は、聞こえない(意味がわからない)』と生徒に伝えています。音読できない単語は、脳で即座に意味情報として処理できません。 教科書の内容をしっかり理解をした(語彙や文法を理解した)上で、正確に音読できるようになれば、リスニング力は自然に身につくと考えています。 さらに、教科書の英文が暗唱できるようになると、英語の自然なコロケーションを身につけることができ、アウトプットに繋げることができます。 教科書を丁寧に音読することを継続していれば、国公立2次試験のライティングで必要な力も十分に養うことができると考えています。」

 同校では週に2回程度、Qulmeeで音読を配信しているそうだ。指導のねらいに即して英文を加工して登録し、授業と有機的に結びついた家庭学習の環境を整えることで、武村先生は1年生のうちから大学受験を視野に入れた指導を行っている。今後は、生徒が自由に英文を登録して音読練習を行うQulmeeの「自己学習機能」を、ディベートやスピーチのアウトプットの学習に活用していきたいと展望を話してくれた。

 利用開始したばかりの同校で、Qulmeeの諸機能をフル活用して学習が進められるその根底には、武村先生の深く、先を見据えた指導観があると強く感じた。

インタビューを終えて

Qulmeeは自由に教材を作成することができます。そのメリットは、生徒が使用する様々な教材(教科書・副読本など)を課題にできることとばかり考えていましたが、先生にとってのメリットは、「指導のねらいや継続的な運用に適した教材を配信できること」にあるのだと気づかされました。また、武村先生が一人一人の学習状況を丁寧に把握され、良いところも改善すべきところも具体的に見取ってくれることは、生徒にとって大きなモチベーションにつながっているように感じました。そして、そうした学習の中でQulmeeを有効に活用されていることをとてもうれしく感じています。武村先生、ありがとうございました!

教育コンテンツ事業部 平松 和旗

教育コンテンツ事業部 平松 和旗

静岡県立清水東高等学校

武村真希 教諭 

導入時期2025年

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