【辞書コラム㉚】辞書の使い方

英語学習が楽しくなる「魔法の辞書」:英英辞典を使ってみよう(入門編)

#初級

英語学習が楽しくなる「魔法の辞書」:英英辞典を使ってみよう(入門編)

「英英辞典」を知っていますか?

皆さんは、英語の授業で知らない英単語の意味を調べるときは英和辞典、英作文をするときに日本語から英語訳を知りたいときは和英辞典をよく使うと思います。DONGRIでも、さまざまな英和辞典や和英辞典がラインナップされていますので、皆さんも日常的な英語学習や受験勉強で手放せないのではないでしょうか。

実は、英語の辞書には、英和辞典と和英辞典のほかに「第3の辞書」として「英英辞典」というものがあります。DONGRIの辞書にはCOBUILD Learner’s Dictionary、 COBUILD Advanced Dictionaryの2種類の英英辞典がありますので、英和辞典や和英辞典、国語辞典に加えて英英辞典をインストールしている高校もあります。英語の先生から「英語力をつけるには、英和辞典だけでなく英英辞典を引くようにしましょう」と言われた人もいるかもしれませんが、英和辞典と和英辞典だけで不自由していないのに、なぜ英英辞典を引かなければいけないのか?と思った人はいませんか? 今回から数回にわたり、DONGRIの辞書ラインナップにある英英辞典を紹介しながら、皆さんの英語力をつけるとともに、英英辞典を引くのが楽しくなる秘訣をお話しします。

英英辞典は「英和辞典の上級版」ではない

英英辞典は、英語の単語の意味を英語で説明した辞書で、私たちにとっての国語辞典のようなものです。日本語で意味が出ているわけではありませんので、難しく感じる人も多いと思います。皆さんの中には、英和辞典を使っていては難しい入試には対応できないから、受験勉強の時はなるべく英英辞典を使うようにしないといけない、と思っている人がいるかもしれません。とくに、英語が得意で大学では英語を専門に学びたい、と思う意欲的な皆さんで、英語の勉強をするときには日本語は邪魔になるから、英和辞典は封印し、日本語が使われていない英英辞典を使うべきだ、と思っている人はいませんか? このように思っていると英英辞典を引くのが苦痛になり、英語の勉強に興味が持てなくなってしまうかもしれません。

ところで、自転車に乗れるようになった小学生が三輪車に乗ることはありませんが、運転免許をとって車の運転ができる人でも、ちょっとした買い物なら自転車を使う人は珍しくありませんね。辞書に関しても同じことが言えます。英和辞典と英英辞典の関係は、三輪車と自転車ではなく、自転車と自動車のようなものです。「英和辞典を卒業して英英辞典を使う」のでなく、「英和辞典を使い続けながら、英英辞典を通してより(英語の)大きな世界にふれる」と考えることが大切です。英英辞典が引けるようになっても、英和辞典も今までのように使い続ければいいですし、そうすべきでしょう。

英英辞典を好きになるための「3つのポイント」

では、実際にどのように英英辞典を使えばいいか、数回に分けてDONGRIのCOBUILD Learner’s Dictionaryを使いながら練習してみましょう。英英辞典を購入していない高校生の皆さんも、スクリーンショットを見ながら英英辞典を体験してみてください。興味を持った方は、英英辞典を追加で購入して使ってみることをおすすめします。


追加購入の詳しい方法はこちら

ポイント1:「意味のわからない単語をいきなり英英辞典で引かないこと」

単語の意味が分からないから辞書を引くのに、と思うかもしれませんが、日本語訳がわからない単語をいきなり英英辞典で引くともっとわからなくなってしまいます。英英辞典を使い始めたばかりの頃は、まず英和辞典を引き、その単語の意味を知ったあとで英英辞典を引くようにしましょう。

たとえば、2022年度の大学入学共通テストの英語リーディング(大問5)で次のような文が出てきました。


One day, while working in his father’s potato field, he looked behind him and saw all the straight parallel rows of soil that he had made.

この中で、とくに高校初級の皆さんにはなじみのない語であるsoilを英英辞典で引いてみましょう。Collins COBUILD Learners Dictionaryでは、

soilをコウビルド英英辞典で引く

このように出ています。soilを引いたのに、substanceやsurfaceといった難しい語が定義で使われていて余計にわからなくなってしまった人もいると思います。英英辞典を難しく感じる人の多くは、このように英和辞典と同じような感覚で、意味のわからない単語を引こうとしているのではないでしょうか。

今度は、英和辞典でsoilを引いてみてください。『ジーニアス英和辞典』を引くと「(植物が育つための)土、 土地、 土壌(earth)」と出ていますので、ジャガイモを育てるための土のことだということが簡単に分かります。

soilをジーニアス英和辞典で引く

日本語の意味がわかったら、もう一度英英辞典でsoilを引いてみましょう。
Earth(地球)、 plant(植物)、grow(育つ)といった、すでに皆さんが知っている単語を手がかりにすると、「soilは地球のsurfaceにあるsubstanceのことで、植物が育つところである」と理解できるのではないでしょうか。「土」がどのようなものであるかを考えれば、surfaceが「表面」、substanceは「物質」という意味であることは見当がつくと思います。

知らない単語の意味を知りたいなら英和辞典だけで十分だから、わざわざ英英辞典を引かなくてもいいのではないかと思うかもしれません。しかし、この例からもわかるように、英英辞典を引けばsurface、 substanceといった、大学入試だけでなく、自然科学の分野では大学へ入ってからも頻繁に使われる単語も一緒に学ぶことができます。

英英辞典を英和辞典と一緒に使うことで、様々な「おまけ」を手に入れよう

今お話ししたように、英英辞典を使いこなすための一番の基本は、「英和辞典と一緒に使って、意味の知っている語を英英辞典で引く」ということです。意味を知った状態で英英辞典を引けば余裕ができるので、soilを引いてsurfaceやsubstanceのような関連語を知るといった、英英辞典ならではの「おまけ」を手にすることができます。DONGRIの英英辞典なら、定義の中に出てきた知らない単語を「さらに検索」で英和辞典にジャンプして調べたり、逆に英和辞典で引いた単語を英英辞典で引き直すことも簡単にできますね。

コウビルド英英辞典からジーニアス英和辞典へさらに検索

英英辞典を引いて出会った「おまけ」の情報は、DONGRIのメモ機能を使って書きとめておくことをおすすめします。英英辞典を引いているうちにメモがたまり、英和辞典だけでは得られないほど英語力がついたことを実感できると思います。

コウビルド英英辞典でメモ機能を使用する

英英辞典は英語を読むためだけのものではありません。DONGRIの辞書ラインナップにあるCOBUILDの英英辞典は、英語母語話者が単語の意味を語りかけるように、完全な文章で定義がされていますので、英英辞典の定義をそのまま使うことで、「土」(soil)について英語で書いたり、説明するといった、ライティングやスピーキングの力をつけることもできてしまうのです。

英英辞典は「習うより慣れよ」:すでに知っている単語をたくさん引いてみよう

今回は、英英辞典を初めて使う人を対象に、DONGRIの英英辞典の使い方の第一歩についてお話ししました。皆さんの中には、DONGRIに英英辞典が入っているのに授業以外ではほとんど使っていないという人もいるかもしれません。そのような方は、すでに知っている単語を英英辞典で引いてみてください。たくさんの知っている単語を英英辞典で引いているうちに、英英辞典の説明のしかたにも慣れてきて、英英辞典を引くのが楽しくなるのではないでしょうか。

英英辞典は、ふだんの授業や入試に限らず、高校を卒業してからも役立つ英語の力をつけることができる「魔法の辞書」です。21回目22回目のコラムにも登場した学生で、初めて受けたTOEICで700点以上をとった人がいますが、大学へ入るまでは英語に関心がなく、英英辞典は難しいというイメージがあったそうです。私の授業で、「英英辞典を引くときは英和辞典も積極的に引いてよい」と言われたことで英英辞典への抵抗感がなくなり、大学の授業を離れてからも通用する英語力を身につけることができたと聞きました。資格試験での高得点にもつながったそうです。

今回は、英英辞典の入門編として、英和辞典と英英辞典の「合わせ技」をご紹介しました。とくに先生方の中には、せっかく英英辞典を導入しているのだから、英英辞典しかできない使い方を知りたいという方もいらっしゃると思います。次回は応用編として、英英辞典ならではの使いこなしポイントをお話ししたいと思います。

この記事の執筆者

関山健治(せきやま けんじ)先生写真

中部大学 准教授

関山健治先生

沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。

著書に『辞書からはじめる英語学習』(2007年、小学館)、『英語のしくみ』(2009年、白水社)、『日本語から考える!英語の表現』(共著、2011年、白水社)、『英語辞書マイスターへの道』(2017年、ひつじ書房)などがある。

執筆・校閲者として『ウィズダム英和辞典(第3版)』(三省堂)、『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』(小学館)、編集委員として『ベーシックジーニアス英和辞典(第2版)』などを担当。

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