中部大学 准教授
関山健治先生
沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。
【辞書コラム㉔】辞書の使い方
#中級
前回は、和英辞典の使い方の4つのポイントのうち、「ポイント1:原形で引く」「ポイント2:易しい別の日本語に言いかえて引く」という2つについてお話ししました。今回は応用編として、DONGRIならではの機能を使いこなしながら日本語を英語に直す練習をしてみましょう。
多くの皆さんは、『ジーニアス英和・和英辞典』『ウィズダム英和・和英辞典』『オーレックス英和・和英辞典』のように、英和辞典と和英辞典がセットになった辞書を使っていると思います。一方で、英語が苦手な皆さんの中には、易しめの英和辞典である『エースクラウン英和辞典』『ベーシックジーニアス英和辞典』などをインストールしている人もいるのではないでしょうか。このような辞書にはペアとなる和英辞典がないため、英語を書くときに困ってしまう人もいるかもしれませんが、今回は、これらの辞書の付録として搭載されている「和英小辞典」を使ってみましょう。
練習として、「最近は、ほとんどの学生がコンピュータを使う」という日本文を英語にしてみましょう。カッコ内に「最近」にあたる語を入れてみてください。
( ), many students use computers.
『ベーシックジーニアス英和辞典』や『エースクラウン英和辞典』では、検索条件で「和英小辞典を調べる」を選び、日本語の単語を入れると英語訳が表示されます。※ 『ベーシックジーニアス英和辞典』では、英和辞典を引くときのように「で始まることば」を選び、日本語を入れてもかまいません。
このように、和英辞典がインストールされていない場合でも、英和辞典の付録になっている和英小辞典を引けば、「最近」は英語ではrecentlyやlatelyのように言うことが分かります。そのため、(Recently), many students use computers.のようにすればよいと思うかもしれませんが、和英辞典を使うときの大きな落とし穴がここにあります。
英和辞典を引くときは、載っている日本語訳が正しいかどうか、日本人である私たちにとっても判断しやすいのですが、和英辞典の場合は、出ている英単語をそのまま使ってしまうと不自然な英語になってしまうこともあります。とくに、「和英小辞典」は和英「辞典」というよりは和英「索引」のようなものであり、使い方の注意などが出ていません。そのため、出ている英単語をそのまま使うのでなく、英和辞典で引き直して使い方が正しいかどうかを判断する必要があります。
紙の辞書ではこのような「引き直し」は面倒ですが、DONGRIを使えば、出てきた英単語をクリックするだけで英和辞典にジャンプして引き直してくれます。たとえば、『ベーシックジーニアス英和辞典』の和英小辞典で「最近」を引き、出てきた英単語のrecentlyをクリックしてみましょう。すると、英和辞典のrecentlyにジャンプして次のような画面になります。
「使い方」として、「recentlyは過去形または現在完了形とともに用い、 現在形の文には用いない. 現在形の文で「最近」を表すにはthese daysなどを用いる」とあります。上の文は、「(昔はそうではなかったが)最近はほとんどの学生がコンピュータを使う」という意味になりますので、現在形で表します。そのため、recentlyやlatelyでなく、these daysを使い、These days, most students use computers.のようにすれば正しい英文になります。
同じように、latelyにもジャンプしてみましょう。
「《◆ふつう現在完了形と共に用いられる》」とありますので、現在形では使われないことが分かります。
このように、英和辞典に付属する和英小辞典を使えば、和英辞典を持っていない人でも「ある日本語を英語で何と言うか」を手軽に知ることができます。英語で話していて自分の言いたいことを英語で何と言うのか思い浮かばない場合など、とっさに調べる場合には便利ですが、英作文の宿題や受験勉強などで英語を書くときは、和英小辞典に出てきた英単語をそのまま使うのでなく、英和辞典にジャンプして正しい使い方を確認するようにしましょう。
『ジーニアス和英辞典』、『ウィズダム和英辞典』、『オーレックス和英辞典』のような単体の和英辞典は、今までにお話しした和英小辞典と違い、英訳語だけでなく、詳しい使い方の説明も和英辞典の中に出ています。これらの和英辞典を持っている人は、「最近」を和英辞典で引いてみましょう。たとえば、『ジーニアス和英辞典』では次のように出ています。
recently, lately, these daysなどの英訳語に加え、使い分けの説明へのリンクが出ていますので、「このごろ(使い分け)」をクリック(タップ)してみましょう。
「使い分け」の詳しい説明が出ています。ここからも、現在形で使うことができるのはnowadaysとthese daysのみであり、recentlyやlatelyは現在形では使われないことが分かります。和英小辞典と違い用例も豊富に出ていますので、英語を書くときの「お手本」として活用することができます。
このように、和英辞典を使えば、英和辞典を引き直さなくても正しい英文を書くために必要な情報を手にすることができます。和英辞典だけでよく分からなければ英和辞典にジャンプすることで、より詳しい解説や和英辞典以上に豊富な用例を見つけることもできるでしょう。
『ベーシックジーニアス英和辞典』や『エースクラウン英和辞典』を使っていて、和英辞典をインストールしていない人は、当面は先ほどお話ししたように、英和辞典の付録に載っている和英小辞典で英訳語を調べ、その語を英和辞典にジャンプして引き直しながら英語を書いてみましょう。英語を書くことに慣れ、英語の力がついてくると、和英小辞典は不便で物足りなく感じるようになるでしょうから、『ジーニアス英和・和英辞典』『ウィズダム英和・和英辞典』のように、英和辞典と和英辞典がセットになった、よりレベルアップした辞書を買い足してみてはいかがでしょうか。
紙の辞書しかなかった頃は、重くて高価な辞書を買い足すよりも、1冊の辞書をボロボロになるまで使いつぶすことがよいと考える人も多かったのですが、DONGRIなら、どれだけ辞書を買い足しても荷物になることはありません。紙の英和辞典1冊買うよりも安い値段で英和と和英の2冊を購入することができますから、英和辞典と和英辞典をペアで使いこなすことで、英検や国公立大の二次試験、難関私大の入試などで出題される本格的なライティングにも対応できる力をつけることができます。
次回は、和英辞典の使い方の最終回として、DONGRIならではの特徴である、日本語訳から用例を検索する機能を使いながら、自信を持って英語を書くための秘訣をお話ししたいと思います。
中部大学 准教授
関山健治先生
沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。
著書に『辞書からはじめる英語学習』(2007年、小学館)、『英語のしくみ』(2009年、白水社)、『日本語から考える!英語の表現』(共著、2011年、白水社)、『英語辞書マイスターへの道』(2017年、ひつじ書房)などがある。
執筆・校閲者として『ウィズダム英和辞典(第3版)』(三省堂)、『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』(小学館)、編集委員として『ベーシックジーニアス英和辞典(第2版)』などを担当。