【辞書コラム④】辞書の使い方

名詞を引いてみよう① ~可算名詞と不可算名詞をチェック~

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今回から数回に分けて、品詞ごとに辞書を引くコツをお話しします。まず、名詞の引き方について、2回に分けてお話しします。 英語の名詞は「数えられる名詞」(可算名詞)と「数えられない名詞」(不可算名詞)に分けられますが、辞書を引く時には、どのようなことに注意したらよいのでしょうか?

「数えられる名詞」(可算名詞)と「数えられない名詞」(不可算名詞)

英語の名詞は「数えられる名詞」(可算名詞)と「数えられない名詞」(不可算名詞)に分けられます。ここで注意しないといけないのは、私たちがものを数えるときの日常的な感覚と、英語の文法の中で数えられるかどうかということが必ずしも一致するとは限らないということです。たとえば、皆さんの感覚で、次の名詞が数えられる名詞かどうか、辞書を引かずに考えてみてください。

book / pen / chalk / pizza / coffee / paper

2冊、ペン5本、チョーク3本、ピザ1切れ、コーヒー2杯、紙3のように、日常生活でも数えることが多い名詞ばかりですね。

しかし、英文法では、この中で数えられる名詞はbookとpenの2語だけで、それ以外は数えられない名詞です。
paperは、後でもふれますが、「紙」の意味に限ってでは数えられない名詞です。

このように、日常的な感覚だけで考えてしまうと間違えることもありますので、とくに英語を書くときは、すでに意味を知っている名詞でも辞書を引き、可算名詞か不可算名詞かを確認するようにしましょう。

可算名詞は[C]、不可算名詞は[U]

皆さんの使っている辞書で、bookを引いてみましょう。

たとえば、ベーシックジーニアス英和辞典でbookを引くと、次のように[C]という記号があります。これは、Countable nounの略で、数えられる名詞であることを示しています。

 

一方、paperを引いてみると、次のように[U]という記号があります。
これは、Uncountable nounの略で、数えられない名詞であることを示しています。

 

「ローカルルール」と「グローバルルール」の違いに注意

細かなことですが、記号の位置にも注意する必要があります。

bookの場合、1、 2、3…という語義の前に[C]の記号があります。これは、bookのすべての語義が数えられる名詞であるという意味です。たとえて言うなら、全校の生徒を対象にした校則のようなものです。

 



では、paperはどうでしょうか。

1の後には[U]、2、 4、 5の後には[C]になっています。これは、1番目の「紙」の意味では数えられない名詞であり、2、 4、 5番目の新聞、書類…のような意味では数えられる名詞になるという意味です。このように、語義の数字の後に記号がある場合は、クラスごとに決めたルールのようなもので、同じ学校(単語)の中でも、クラス(語義)によって違うものと考えると分かりやすいでしょう。

可算名詞を引いたら複数形を確認しよう

実際に可算名詞を引いてみましょう。可算名詞には、単数形と複数形があります。
a bookのように、本1冊の場合は単数形、2つ以上のときはtwo booksのように複数形を使います。通常は、booksのように、単数形にsをつけることで複数形になりますが、中にはchildのように、不規則変化をする名詞もあります。

では、それぞれの語をベーシックジーニアス英和辞典とウィズダム英和辞典で引いてみましょう。

ベーシックジーニアス英和辞典やエースクラウン英和辞典など、高校初級向けの辞書では、規則変化、不規則変化のいずれの場合でも「複」の後に複数形が出ています。

▼ベーシックジーニアス

 

一方、ウィズダム英和辞典やコンパスローズ英和辞典など、上級向けの辞書で規則変化をする語の場合、(~s)のように、語尾のみを載せています。

▼ウィズダム英和辞典

 

なお、重要度ランクの低い語の場合、可算名詞であっても、規則変化をする場合は変化形が出ていないことがあります。このような語は、特に注意書きがない場合はsをつけることで複数形になります。

可算名詞は、決まった複数形がありますので、辞書で複数形を調べることができればそれほど難しくありません。一方、不可算名詞には複数形がないので、先ほど例に出したチョークやピザ、コーヒーなどを数えたいときは、単語ごとに独自の言い方があります。

次回は、不可算名詞を中心に「数えられない名詞をどう数えるか」ということについて考えてみましょう。

この記事の執筆者

関山健治(せきやま けんじ)先生写真

中部大学 准教授

関山健治先生

沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。

著書に『辞書からはじめる英語学習』(2007年、小学館)、『英語のしくみ』(2009年、白水社)、『日本語から考える!英語の表現』(共著、2011年、白水社)、『英語辞書マイスターへの道』(2017年、ひつじ書房)などがある。

執筆・校閲者として『ウィズダム英和辞典(第3版)』(三省堂)、『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』(小学館)、編集委員として『ベーシックジーニアス英和辞典(第2版)』などを担当。

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