中部大学 准教授
関山健治先生
沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。
【辞書コラム⑰】辞書の使い方
#上級#動詞
前回まで、品詞ごとに英和辞典の使い方を練習してきました。今回からは、応用編として今までに学んだことの復習も盛り込みながら、DONGRIの機能をフル活用する方法をお話ししていきます。
今回は、意味の似た単語(類義語)の区別について、問題練習をしながら学んでいきます。それぞれのカッコ内に「言う」「話す」にあたる語を選択肢から選び、必要であれば過去形に直して入れてみましょう。
(選択肢)say / speak / talk / tell
(1) He ( ) me about the concert.(彼はコンサートについて私に話した)
(2) He ( ) 、 “I’m hungry.” (お腹が空いたよ、と彼が言った)
(3) She ( ) about Okinawa with her friends.(彼女は沖縄のことについて友達と話した)
(4) She couldn’t ( ) well because she was so shocked.(彼女は大変ショックを受けたので、うまく話すことができなかった。)
まず、6回目のコラムの復習として、選択肢の動詞を辞書で調べてみましょう。(画面はジーニアス英和辞典第5版です。)
talkは規則動詞なので、過去形はtalkedになりますね。sayの過去形はsaid、speakの過去形はspoke、tellの過去形はtoldであることを確認しましょう。
似たような意味を持つ語でも、文法的なふるまいは様々です。動詞の場合、英文を見て空欄に自動詞が入るのか、他動詞が入るのかを区別できると、大きな手がかりになります。(1)~(4)の英文を見てみましょう。
(1)は、空欄の後にme(私に)という目的語がありますので、他動詞が入ります。(2)は自動詞と間違えやすいのですが、「お腹が空いている」と(いうことを)言う、という意味なので”I’m hungry.”が目的語となる他動詞が入ります。
一方、(3)や(4)は、空欄の後にabout(前置詞)、 well(副詞)といった名詞(目的語)以外の語がありますので、自動詞が入ります。
空欄に自動詞、他動詞のどちらが入るかが分かれば、あと一歩です。今度は、選択肢の4つの単語を辞書で引き、それぞれの語が自動詞、他動詞のどちらであるかを調べてみましょう。
まず、sayを引いてみましょう。sayは他動詞が先に載っていることからも明らかなように、他動詞として使うことが一般的です。
自動詞として使う場合も、[SV]という文型の表記からも分かるように、sayの後に前置詞などをつけることはありません。
次にspeakを調べてみます。speakも自動詞と他動詞の両方で使われますが、他動詞では「<ある言語>を話す」とあります。
そのため、My father speaks French.(父はフランス語を話します)のように、話すことのできる言語をとることが一般的で、それ以外では自動詞として使われることがほとんどです。
talkはどうでしょうか。talkは自動詞として使われることが基本です。他動詞として使われる場合は、「◆集まると決まって話題になる特定の分野の語をO(目的語)にとる」とあるように、人と話をする、という意味では使われません。
最後に、tellを調べてみましょう。tellにも他動詞と自動詞の両方がありますが、自動詞で使う場合は「口外する」「わかる」といった意味で使うことが多く、「話す」という意味では他動詞です。
ここまで考えたことを以下にまとめておきます。
他動詞が入る文:(1) / (2)
主に他動詞として使われる語:say / tell
自動詞が入る文:(3) / (4)
主に自動詞として使われる語:speak / talk
最後に、それぞれの文にどの動詞が入るかを見ていきましょう。
(1) He ( ) me about the concert.(彼はコンサートについて私に話した)
空欄の後に「人」を表すmeが続いていることがポイントです。tellを引くと、
と出ています。ここからも、目的語(動詞の後にくる語)には「人」を表す語がきて、その後にはaboutを伴い、「~(人)about…」の形で、「~(人)に…について話す」という意味だと言うことが分かりますね。
(2) He ( ) 、 “I’m hungry.” (お腹が空いたよ、と彼が言った)
もう一つの他動詞であるsayを引いてみましょう。
のように出ています。「直接話法で」というところが難しいかもしれませんが、「相手の言ったことをそのまま引用して」と言いかえると分かりやすいかもしれません。すなわち、「彼」が”I’m hungry.”と言ったことを、” ”で囲ってそのまま使うことができるのがsayの特徴です。注記に「say は実際に話される言葉そのものを目的語にすることが可能」と書いてあることからも明らかですね。
次に、自動詞が入る(3)と(4)の文を見ていきましょう。
(3) She ( ) about Okinawa with her friends.(彼女は沖縄のことについて友達と話した)
(3)の文では、動詞の後にaboutを伴っています。talkを引くと、
とありますので、talkが適切です。
(4) She couldn’t ( ) well because she was so shocked.(彼女は大変ショックを受けたので、うまく話すことができなかった。)
(4)は、まとまった内容を話すと言うよりは、ショックを受けたために声を出すこと自体ができない(口がきけない)という意味です。speakを引くと、
とありますので、(4)はspeakがぴったりであることが分かります。
今回は、類義語の区別を知るために、自動詞と他動詞の区別を中心にして、紙の辞書しかなかった頃から行われているやり方を紹介しました。皆さんの中には、もっと簡単に区別する方法はないのかと思った人も多いと思います。次回は、DONGRIならではの機能を使い、類義語の使い分けを手軽に知る方法をお話しします。
中部大学 准教授
関山健治先生
沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。
著書に『辞書からはじめる英語学習』(2007年、小学館)、『英語のしくみ』(2009年、白水社)、『日本語から考える!英語の表現』(共著、2011年、白水社)、『英語辞書マイスターへの道』(2017年、ひつじ書房)などがある。
執筆・校閲者として『ウィズダム英和辞典(第3版)』(三省堂)、『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』(小学館)、編集委員として『ベーシックジーニアス英和辞典(第2版)』などを担当。