【辞書コラム⑦】辞書の使い方

動詞を引いてみよう②自動詞と他動詞とは?見分け方を理解しよう

#中級#動詞

動詞を引いてみよう②自動詞と他動詞とは?見分け方を理解しよう

動詞の引き方の2回目は、自動詞と他動詞の区別について学びましょう。

まず、次の2つの文を比較してみましょう。

(1) The train stopped.

(2) I stopped the train.

どちらの文も、電車が止まるという点では同じですが、(1)は電車が(運転士のブレーキ操作で)停車したというような場合に使うのに対し、(2)は、自分が(非常停止ボタンを押すなどして)意図的に電車を止めたというニュアンスがあります。

(1)のように、主語(train)の動きや変化を述べる動詞(stop)を自動詞(2)のように、主語以外の人や物(train)に影響を及ぼすような動詞(stop)のことを他動詞といいます。

日本語では、(1)では電車が「止まった」(>止まる)、(2)では電車を「止めた」(>止める)のように別の語を使いますので、日本語を学ぶ外国人は区別をするのに苦労します。一方、英語では、多くの動詞はstopのように1つの語が自動詞と他動詞の両方の意味を持っています。



自動詞と他動詞をどのようにして見分けるか?

今述べたように、英語の動詞の多くは、同じ単語で自動詞と他動詞の両方の意味があるので、とくに基本的な動詞は、辞書で引くと多くの語義が並んでいて、必要な意味を見つけ出すのに一苦労です。動詞の意味が分からないと、英語を正確に読むことができないので、辞書を引く前にあきらめてしまう人も多いかもしれません。

動詞を辞書で引くときに大切なことは、辞書を引く前に、その動詞が自動詞か、他動詞かを予想するということです。

上の2つの文で考えてみましょう。(1)の場合、動詞(stopped)の後に何も続けないで使われています。このように、動詞の後に何もつけずに使うことができる動詞は自動詞です。

あるいは、

 

The train stopped suddenly.(電車が急に止まった)

The train stopped at the station.(電車が駅で止まった)

 

のように、動詞のstopを修飾する副詞(suddenly)や前置詞(at)とともに使われることもあります。このように、動詞の後に副詞や前置詞など、名詞「以外」が続く場合も自動詞になります。

では、(2)はどうでしょうか。I stopped the train.のように、stopの後に名詞が続いています。このように、動詞の後に名詞(目的語といいます)が続く場合、その動詞は他動詞として使われています。

皆さんの中には、「日本語で「~を」と言えるなら他動詞」と教わった人もいるかもしれませんが、後でもふれるように例外も多くありますので、日本語訳で考えるのでなく、「動詞の後にくる単語の品詞は何か」ということを意識するようにしましょう。

動詞を辞書で引く際は、今までお話ししたことをもとに、自動詞、他動詞をあらかじめ区別するようにしましょう。英和辞典では、動詞を引くと自動詞(--自)と他動詞(--他)に分かれていますので、自動詞であれば自動詞の箇所のみを見れば、効率よく辞書を引くことができます。

自動詞のように見える他動詞・他動詞のように見える自動詞に注意

英語の動詞の中には、同じ意味でも単語が違うと自動詞、他動詞の区別が違ってしまう語や、日本語訳では自動詞のように見えても実際には他動詞として使われたり、逆に他動詞に見えても自動詞として使われる語もあります。
このような語は、日本人が英語を学ぶ際に間違えることが多いので、日本語訳で安易に判断するのでなく、必ず辞書を引いて自動詞、他動詞の区別を確認するようにしましょう。

次の例で考えてみましょう。arrivereachは、それぞれ自動詞か他動詞か、どちらでしょうか。辞書を引く前に英文を見て、考えてみましょう。

 

(3) We arrived at Nagoya Station this morning.
 (今朝名古屋駅に着きました)

(4) We reached Nagoya Station this morning.
 (今朝名古屋駅に到着しました)

 

arriveはatという前置詞と一緒に使われているので、自動詞ですね。一方、reachは直後に名詞が続きますので、他動詞です。

このように、意味は同じでも単語が違うと自動詞になったり、他動詞になったりすることがあります。
reachのように、日本語では「~に」と訳される場合でも他動詞になる語もあり、日本語訳だけで判断すると דWe reached at Nagoya Station this morning.”のように、余分な前置詞を入れてしまうことがありますので、必ず辞書を引いて確認しましょう。





逆に、日本語では「~を」と表現する場合でも英語では自動詞になる語もあります。

(5) I listen to the radio every morning.(毎朝ラジオを聴きます)

listenの後にtoという前置詞が使われていますので、listenは自動詞です。日本語の「ラジオを聴く」につられて他動詞だと思ってしまい、דI listen the radio every morning.”のようにないように注意しましょう。

自動詞と他動詞で意味が違ってしまう単語には要注意!

英語を読むときに一番こわいのが、自動詞と他動詞の区別を間違えたために、全く別の意味に解釈してしまうことです。

次の文のrunは自動詞、他動詞のどちらかを考えてから辞書を引き、意味を考えてみましょう。

(6) He runs a soccer school for kids.

この場合、runの後にa soccer schoolという名詞が続いていますので、runは他動詞として使われています。runは基本動詞なので、辞書を引くとたくさんの意味が出ていますが、他動詞だということが分かったのですから、他動詞の部分だけを見て意味を考えてみましょう。



runには、中学校で習う「走る」という意味以外にも様々な意味がありますね。
他動詞にも「走る」という意味はありますが、「サッカー教室を走る」というのは不自然なので、2番目の「…を経営する、運営する」という意味が適切であることが分かります。

runのように、自動詞である「走る」という意味だけにとらわれてしまうと、「経営する、運営する」という他動詞にしかない意味に気づかないで間違えてしまうこともあります。runのような、中学校で習うような基本的な動詞が出てきた文で、皆さんの知っている意味で日本語にしたら全く通じない、という場合は、自動詞か他動詞かを考えた後で辞書を引き、皆さんが思いもしなかった意味がないかどうか、確認してみましょう。

私の授業を受けている大学生でも、run=「走る」とだけ覚えていて、(6)の文を「彼はこども向けのサッカー教室で走っています」のように訳してしまう人は何人もいます。辞書は、意味の分からない単語を調べるものと思っている人もいるかもしれませんが、英語の動詞は、中学校で習うような基本的な語ほど奥が深く、思いもしない意味が隠れていることがあります。自動詞、他動詞の区別を身につけることで、より速く辞書が引けるようになり、今まで気づかなかったような意味に出会えることでしょう。

新コンテンツ『ロイヤル英文法』も活用しよう

DONGRIの英和辞典の中で、ベーシックジーニアス英和辞典やエースクラウン英和辞典など、高校初級向けの辞書には、自動詞、他動詞の区別を含め、基礎的な英文法の解説が収録されていますが、英語が好きな人や難関大学の受験をめざす人は、辞書とは別に英文法の解説書を使ってみることをおすすめします。

DONGRIのコンテンツに追加された『ロイヤル英文法』は、私を含め、英語の研究者も手放せない文法書ですが、英語の授業で学んだことをさらに深めるには、高校生の皆さんでも十分理解できるようにていねいな説明がされています。たとえば、今回学んだ自動詞と間違えやすい他動詞、他動詞と間違えやすい自動詞については、ロイヤル英文法で「自動詞」と入れて検索すると、§163 自動詞と取りちがえやすい他動詞、§164 他動詞と取りちがえやすい自動詞のところで詳しく説明されていますので活用してみてください。

この記事の執筆者

関山健治(せきやま けんじ)先生写真

中部大学 准教授

関山健治先生

沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。

著書に『辞書からはじめる英語学習』(2007年、小学館)、『英語のしくみ』(2009年、白水社)、『日本語から考える!英語の表現』(共著、2011年、白水社)、『英語辞書マイスターへの道』(2017年、ひつじ書房)などがある。

執筆・校閲者として『ウィズダム英和辞典(第3版)』(三省堂)、『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』(小学館)、編集委員として『ベーシックジーニアス英和辞典(第2版)』などを担当。

辞書アプリDONGRI
音読トレーナーQulmee

keyboard_arrow_left記事一覧へ戻る