【辞書コラム⑧】辞書の使い方

動詞を引いてみよう③ 文型を辞書で調べて、英語の構造を理解しよう

#中級#動詞

動詞を引いてみよう③文型を辞書で調べて、英語の構造を理解しよう

前回、自動詞と他動詞の区別についてお話ししました。動詞の後に名詞(目的語)が続くものが他動詞、副詞や前置詞などの名詞以外が続くものが自動詞でしたね。

動詞を引くときに自動詞と他動詞を見分けることができるだけでも辞書を効率的に引くことができますが、今回は、必要とする意味をより速く見つけるために、文型表示について学びます。文型表示は、辞書に出ている情報の中でもとっつきにくいイメージがありますが、文型表示の読み方を身につけると、文法的に正しい英語を書くことができるだけでなく、英検などの資格試験や大学入試で出題される短文の穴埋め問題にも役立ちます。

文型を辞書で調べてみよう

今回は1回目として、基本的な動詞を辞書で引きながら、文型表示を手がかりにして意味を考えてみましょう。

Q.「野球(をするの)が好きです」と言いたいとき、次の3つの英文のうち正しいものはどれでしょうか。

(1a) I like baseball.

(1b) I like to play baseball.

(1c) I like playing baseball.

『ジーニアス英和辞典』でlikeを引くと、次のように出ています。




[ ]で囲まれている部分が文型表示です。暗号のように見えますが、[SVO]の場合、(1a)のように、V(動詞・ここではlike)の後にO(目的語・ここではbaseball)を伴うことを示しています。

[SV to do] は、(1b)のように、動詞の後に「~すること」という意味のto不定詞(to+動詞の原形)を伴うことを表しています。なお、文型表示ではdoとなっていますが、これはdoだけでなく、playなどを含めた様々な動詞の原形が入る、という意味です。

[SV doing] は、(1c)のように、動詞の後に「~すること」という意味の動名詞(動詞の-ing形)を伴うことを表しています。doingは、playなどを含めた様々な動詞の-ing形が入ります。

このように、likeという動詞は、1a、1b、1cのいずれの形で使うこともできるため、3つの英文はすべて正しい文になります。




文型表示は辞書によって書き方が違う

辞書によっては、1aのように、動詞の後に目的語(名詞や代名詞)をそのまま続ける場合は、文型表示を省略している場合もあります。たとえば、『ベーシックジーニアス英和辞典』でlikeを引くと、



のように、文型表示が載っていません。他動詞を引いて、文型表示が出ていない場合は、動詞の後に目的語をそのままの形で置く、と考えるといいでしょう。

また、辞書の中には、SVOといった記号を使わないで、実際の英文に近い形で示しているものもあります。『ベーシックジーニアス英和辞典』では、次のように記されています。



では、次に、enjoyを使って「野球をするのを楽しみます」と言ってみましょう。
次の3つの英文のうち正しいものはどれでしょうか。

(2a) I enjoy baseball.

(2b) I enjoy to play baseball.

(2c) I enjoy playing baseball.

『ジーニアス英和辞典』でenjoyを引くと次のように出ています。



enjoyも、likeと同様に[SVO]、 [SV doing]の形で使われることが分かります。そのため、2a、2cの文は正しい英文ですが、likeと違い、[SV to do]という形は出ていません。enjoyは、目的語の部分に名詞や動名詞(動詞の-ing形)をとることはできるけれど、to不定詞(to+動詞の原形)は使えない動詞ということになりますので、2bの文は誤りです。

このように、一口に動詞といってもそれぞれに個性があり、どういう種類の語と一緒に使われるかは様々です。このような違いは、英語母語話者であれば無意識のうちに身につけていますが、私たちは、英語の授業などで単語を学ぶ際に意味に加えて単語の使い方も合わせて習得する必要があります。

文型表示は、英文法の知識も必要になるので、とくに高校初級の皆さんには難しく感じるかもしれませんが、皆さんが使っている高校生向けの辞書では、文型表示だけでなく用例も必ず出ています。そのため、文型表示を見てどういう形で単語が使われるかを確認したら、必ず用例を見て、文型表示で示されている形が正しいことを確認するようにするといいでしょう。

今回は、基本的な単語を例に出して、文型表示の読み方をお話ししました。次回は、大学入試の語彙問題などを例に出しながら、文型表示をより詳しく学んでみましょう。皆さんの中には、大学入試はまだ先の話と思っている人もいるかもしれませんが、英語の場合、マーク式の問題であれば、高校1年生でも辞書を使えば多くの問題を解くことができます。その秘訣が、今回お話しした文型表示の読み方を身につけることと言えます。

この記事の執筆者

関山健治(せきやま けんじ)先生写真

中部大学 准教授

関山健治先生

沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。

著書に『辞書からはじめる英語学習』(2007年、小学館)、『英語のしくみ』(2009年、白水社)、『日本語から考える!英語の表現』(共著、2011年、白水社)、『英語辞書マイスターへの道』(2017年、ひつじ書房)などがある。

執筆・校閲者として『ウィズダム英和辞典(第3版)』(三省堂)、『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』(小学館)、編集委員として『ベーシックジーニアス英和辞典(第2版)』などを担当。

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