【辞書コラム⑮】辞書の使い方

副詞を引いてみよう②「late」は形容詞?副詞?

#中級#形容詞・副詞

サムネイル:副詞を引いてみよう②「late」は形容詞?副詞?

今回は、形容詞と副詞の使い分けについてのまとめとして、前回のコラムで最後に出した「宿題」を中心に考えてみます。
はじめに、形容詞と副詞の違いをもう一度ふり返ってみましょう。

・名詞の前に置いて、名詞を修飾する:形容詞(限定用法)
・be動詞の後に置いて、主語の名詞を修飾する:形容詞(叙述用法)
・名詞以外を修飾する:副詞

これをもとに、それぞれの英文を見ていきましょう。今回は、lateを使った1a-1dの文を考えてみましょう。

(1a) The ceremony was held in honor of the late president.

ここでは、president(大統領)という名詞の前にlateがあります。そのため、限定用法の形容詞として使われていることが分かります。

辞書で形容詞のlateを引いてみましょう。たとえば、ジーニアス英和辞典で形容詞のlateを引くと、2、 4、 5の語義には[限定]というラベルがついています。

なお、ウィズダム英和辞典、ベーシックジーニアス英和辞典など、辞書によっては「限定」のかわりに「名詞の前で」のような注記がある場合もあります。

ceremony「儀式、式典」、in honor of~「~を記念して、~に敬意を表して」という語が使われていることからも、ジーニアス英和辞典の4番目の語義の「今は亡き」という意味が適切であることが分かります。

次に1bの文を見てみましょう。

(1b) She stayed late at work last night.

ここでは、stayという動詞の後にlateがありますので、動詞を修飾しています。
そのため、lateは副詞として使われています。辞書でlateを引き、副詞のところを見てみましょう。

すると、最初の用例にsit [stay] up (till) late「夜遅くまで起きている」という句が見つかりますので、1bは「彼女は昨夜遅くまで仕事をした」という意味になることが分かります。

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現在DONGRIに収録されている英和辞典は全て「学習英和辞典」といい、英語を学ぶ人に役立つように用例を豊富に収録しています。そのため、今lateを引いたときのように、時には調べようとしている英文とよく似た例が見つかることもあるので、自信をもって英語を読んだり、書いたりすることができるようになります。

ネット上にある無料で引ける辞書や翻訳サイトなどと違い、情報量が多いので慣れるまでは時間がかかりますが、使いこなすにつれて、自分が必要としている情報を見つけやすくなるのがDONGRIを使う醍醐味とも言えます。

[ ]と( )に注意!

辞書の用例は、sit [stay] up (till) lateのように、限られたスペースに多くの情報を盛り込むために、2種類のカッコが使われています。

[ ]は、「直前の語と置きかえることができる」という意味です。この場合、sit up / stay upのどちらでもほぼ同じ意味になります。

( )は、「カッコ内の語は省略してもよい」という意味です。この場合tillをつけても、つけなくても意味はほとんど変わりません。

このようなカッコの使い分け方を知っていると、上の用例はsit up till late / sit up late / stay up till late / stay up late の4種類に言いかえ可能であることが分かります。英語を専門とする大学生もあまり知らない「辞書の省エネ」のテクニックに今のうちに慣れておくと、辞書の情報がより理解しやすくなりますよ。

関連語も参照しよう

では、次に1cの文について考えてみます。

(1c) He never comes to school late.

1cのlateも1bと同じく、comeという動詞の後にありますので、副詞としてcomeを修飾しています。「彼は決して学校に遅刻することがない」という意味ですね。

最後は、1dの文です。

(1d) Professor Smith is in his late fifties.

1dのlateは、fiftyの複数形であるfiftiesという名詞の前に置かれていますので、限定用法の形容詞です。

fiftyが「50」の意味であることは知っていても、複数形のfiftiesという語は初めて見た人も多いかもしれません。これはどういう意味なのでしょうか。

ジーニアス英和辞典でfiftyを引くと、He must be in his early fifties by now.(彼は今では50代の初めに違いない)という用例が出ていますので,early fifties(50代のはじめ=50代前半)を参考にすると,late fiftiesは「50代後半」であることが分かります。

なお,fiftiesをはじめ,数字の「50」以外の意味や詳しい説明は,twentyを参照するようにと出ていますので、青字のtwentyを選択してみましょう。twentyにジャンプし、さまざまな意味が表示されます。

ここで注目したいのは[one’s ~ies]という注記です。one’sは、my、 your、 his、 her、 Tom’s…のような、「~の」という意味を表す所有格が入るという意味です。 そのため、1dの文のように、his late fiftiesのような形で使われている場合は、「50代」という年齢を表すことが分かります。50代といっても、50歳から59歳まで10年もありますので、lateという形容詞を使うことで、範囲をより限定することができます。

形容詞のlateを辞書で引き、限定用法の語義の中から探してみましょう。2番目の語義に「終わり近くの、後半の」という意味が出ていますので、「スミス教授は50代後半です」という意味であることが分かりますね。

次回は、今回の続きとして(2a)-(2d)のhardの意味を見ていきましょう。

この記事の執筆者

関山健治(せきやま けんじ)先生写真

中部大学 准教授

関山健治先生

沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。

著書に『辞書からはじめる英語学習』(2007年、小学館)、『英語のしくみ』(2009年、白水社)、『日本語から考える!英語の表現』(共著、2011年、白水社)、『英語辞書マイスターへの道』(2017年、ひつじ書房)などがある。

執筆・校閲者として『ウィズダム英和辞典(第3版)』(三省堂)、『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』(小学館)、編集委員として『ベーシックジーニアス英和辞典(第2版)』などを担当。

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