【辞書コラム㉞】辞書の使い方

2024年度最新版!DONGRIで攻略する大学入学共通テスト

#中級

2024年度最新版!DONGRIで攻略する大学入学共通テスト

先日、大学入学共通テストが行われました。皆さんの中にも、本番を受験した人やネットなどで公開された問題を解いてみた人も多いと思います。昨年度よりも英文の分量が増え、平均点が下がったこともあり、これから受験する人は不安に感じるかもしれません。

今回は、主に現役高校1、2年生の皆さんを対象に、DONGRIの辞書を活用しながらどのように共通テストの勉強を進めていけばいいか、考えてみましょう。

英文の難しさは今までとほとんど変わっていない

SNSなどで発信されている受験生の感想を見ると、過去問よりも難しかったという声が多いのですが、問題文の量が増えたために時間が足りなかったことが大きな原因のようで、問題文のレベルが高くなったというわけではありません。第10回目のコラムで、2022年度の共通テストで出題された英文で使われている単語を分析しましたが、今回も同じように選択肢の部分を除いた英語(リーディング)の問題文を検証してみました。

ニュースなどでも報道されているように、今までよりも総語数(専門的には「延べ語数」と言います)が多くなりました(今年度は約3860語)。しかし、使われている単語の種類(「異なり語数」と言います)は、私が調べたデータでは1013種類(2022年度は1008種類)であり、今までとほとんど変わっていません。延べ語数が増えているのに異なり語数はあまり変わらないということは、同じ単語が繰り返し使われることが増えたということです。闇雲にたくさんの語を覚えようとするのでなく、受験勉強を通して、基本的な単語を何回も繰り返して確実に身につけ、易しめの英文を大量に読む練習をした受験生にとっては、むしろとっつきやすかったと言えるのではないでしょうか。
※ 異なり語数は、変化形も含めて1語とカウントしています。たとえば、play、 plays、 playingは3語ではなく、3語合わせて1語としてカウントしています。

自分の使っている辞書の重要度ランクと共通テストの英文に出てきた語の関係を知っておこう

皆さんの中には、自分がふだん使っている辞書は共通テストの勉強に十分対応できるのかということが気になる人がいるかもしれません。辞書には重要度別にランク(星印)がついていますが、どのレベルの単語まで知っておけばいいか、疑問に思う人もいるのではないでしょうか。

10回目のコラムと同じように、DONGRIの高校生向け辞書にラインナップされている辞書の中から、高校初級向けの『ベーシックジーニアス英和辞典』(BG2)、『エースクラウン英和辞典』(AC3)、高校中級向けの『グランドセンチュリー英和辞典』(GC4)、高校上級向けの『ジーニアス英和辞典』(G6)、『ウィズダム英和辞典』(W4)の5冊の英和辞典のそれぞれについて、重要度ランク(星印)ごとに共通テストの英文のカバー率を出してみました。

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一口に高校生向けの英和辞典といっても、初級向けの辞書と上級向けの辞書では収録語数で数万語近い差があります。しかし、共通テストの英文であれば、どの辞書でも出てきた単語の95%以上をカバーしていますし、それぞれの辞書の中でもっともランクの高い(星印の一番多い)語を覚えるだけで、全体の半分ぐらいの語をカバーできることがグラフからも分かりますね。
※ 『グランドセンチュリー英和辞典』は星4つのランクがありませんので、星3つの語が最も高いランクになります。

辞書によって各ランクの語数は違いますが、もっともランクの高い語はどの辞書でも約1000数百語であり、その多くは高校入試を受けるまでに学んだ単語です。皆さんの中には、共通テストの問題は難しいから、たくさんの単語を覚えないといけないと思っている人もいるかもしれませんが、基本的な単語をしっかり学び、その知識を利用して速く英文を読む練習をすることが重要になります。

高校1年生は、辞書の最重要語を復習してみよう

とくに高校1年生の皆さんは、中学校の復習をかねて、自分が使っているDONGRIの英和辞典の最も高いランクの語だけをピックアップして意味が分かるかどうかを確認することをおすすめします。辞書によっては、「索引」をクリックすると、ランクごとにまとめて単語を一覧することができますので、1週間で何語チェックする、と決めて、その週に覚える単語をDONGRIの単語帳機能に登録したり、紙の単語カードに書き写したりして、通学途中などのすきま時間で学習してみてはいかがでしょうか。

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高校2年生は、受験英語の核となる星3つの単語を重点的に

高校2年生の皆さんは、来年度から始まる本格的な受験勉強を前に、最も高いランクの語をざっと見て、知らない単語をつぶしていくことと並行して、星3つ(『グランドセンチュリー英和辞典』では星2つ)の語をじっくり学んでみましょう。このランクの語は、共通テストの中核となる高校の教科書レベルの語なので、ただ意味が分かるだけでなく、例文を読んでみたり、使い方を辞書で調べてみるなどして、深く学んでいく必要があります。『ジーニアス英和辞典』や『ウィズダム英和辞典』のような上級レベルの英和辞典を使っている人は、このレベルの単語までマスターすれば今年度の共通テストに出てくる単語の8割以上がカバーできますので、受験勉強のスタートラインに立つことができます。

さらに、高校3年生の夏休みまでに、上級レベルの英和辞典なら星2つまで、それ以外の英和辞典なら星1つまで覚えることができれば、共通テストに出てくる単語の9割は(基本的な意味だけでも)知っていることになりますので、余裕を持って試験に臨むことができます。

辞書に出ていない単語は?

上のグラフを見ても分かるように、仮に辞書に載っている単語を全部知っていれば、どの辞書でも共通テストに出てくる単語の95%以上をカバーします。一方、皆さんの中には、どんな辞書でも共通テストに出てくる単語すべてが載っているわけではないので、不安に感じる人もいるのではないでしょうか。

たとえば、共通テストに出た1013種類の語の中で、今回とりあげた辞書の中でもっとも収録語数の多い辞書の一つである『ジーニアス英和辞典』にも出ていない語は29語(2.9%)ありました。その多くは、Takuya, Kasumi, Kawanakaといった日本人の名前やYentonville, Entonvilleのような架空の地名、irasshai maseのように日本語をローマ字表記した語、集計する際にレイアウトの関係で含まれてしまった実在しない語などですから、英文の内容を理解するには影響ありません。

DONGRIを受験勉強で有効活用すれば、共通テストもこわくない

最後に、これから受験勉強にとりかかる高校1年、2年生の皆さんを対象に、DONGRIを有効活用して英語力をつける方法を考えてみます。

辞書を使って共通テストの問題を解いてみよう

共通テストを含め、ほとんどの日本の大学入試では辞書を使うことができません。そのため、辞書を使って入試問題を解いて何の意味があるのかと思うかもしれませんが、共通テストの英語(リーディング)は、英語を読む力を測るものですから、数学や国語の問題と違い、辞書を引けば、高校1年生でもほぼ満点がとれます。制限時間を150分ぐらいにして、辞書を引きながら満点をとることを目標にしてみてください。私が高校1年生の時にも同じようなことをしましたが、辞書を使ったとはいえ、高校1年生が共通テストの問題で満点がとれれば自信がつくだけでなく、辞書の引き方に慣れることもできます。それができたら、制限時間を本番と同じぐらいまで短くしていって、大問ごとに辞書を引く回数を制限する(大問1つあたり3語までのように)ようにすると、より本番に近い環境で練習することができます。

DONGRIを使えば、引いた単語が自動的に「閲覧履歴」に残りますので、後で復習することも簡単です。また、勉強した日付ごとに「しおり」を登録すると、単語力がついたことを実感できるようになりますね。

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しおりタグの色分けは、2024年2月8日にリリース予定です。

辞書を引くとき、引かない時を切り分けて「ハイブリッドな単語学習」を

英語の先生の中には、受験勉強で辞書を使うことに肯定的な人とそうでない人がいます。「知らない単語はどんどん辞書で調べなさい」とおっしゃる先生も、「辞書を使っていては本番で通用しないから、分からない単語は辞書を使わないで推測するようにしなさい」と指導する先生もいらっしゃいますが、大事なことは、辞書を使うべき場面と使わない場面を区別するということです。

共通テストでは、多量の英文を限られた時間で読む、速読の力が求められます。速読の際は、辞書を引かずに英語を読み、設問に答えるのは言うまでもありませんが、それだけで済ますのでなく、復習するときには時間をかけて辞書を引き、意味を推測した単語や読み飛ばしてしまった語を調べ、必要に応じて覚えるという精読の練習も必要になります。皆さんの中には、意味を知らない単語でも何となく(感覚で)分かってしまう人もいると思いますが、そのような単語こそ要注意です。

DONGRIを使う場合は、速読の練習中でも意味の分からない単語が出てきたら(辞書の記述は見ないで)検索操作だけしておくことをおすすめします。そうすれば、「閲覧履歴」に引いた単語が残りますので、辞書を引かずに速読をする練習と、読み終わってからしおりに登録された語を振り返って精読する練習を両立させた「ハイブリッドな単語学習」をすることができます。

易しい英文、短い英文こそ要注意

共通テストでの問題の特徴は、1回のテストの中に、易しい、短い英文と難しい、長い英文が混ざっているということです。今年度の問題もそうですが、大問1~3までは英検準2級レベルの短い英文で、設問も少なく、とくに時間をかけて受験勉強をした人は拍子抜けするような内容ですが、前半で安心して時間をかけすぎてしまうと、後半になって量が急に増えるため、時間が足りなくなってしまいます。

皆さんの中には、前半の英文は易しいからと油断してしまう人もいると思いますが、実際には、前半の(短めの)英文は、延べ語数の中での異なり語数の比率が後半の(長めの)英文よりも高いことが多いので注意が必要です。前半の英文は、短くても、そこで使われている単語の種類(異なり語数)が多いため、後半の英文よりも意味を理解しにくいことがよくあります。

DONGRIを進学、就職してからも継続して使ってみよう

高校3年生の皆さんの中には、受験勉強の際にもDONGRIを活用し、共通テストをはじめとした大学入試でよい結果を出すことができた人がいると思います。DONGRIは、大学に入学してからも利用することができます※。同じ辞書を使う限り、高校生の頃に使った学習データ(しおりやメモに書いた内容など)を引き継ぐことも可能です。卒業してからも使い慣れたDONGRIの辞書を使い続け、必要な情報を自分の力で手に入れる習慣をつけてください。

利用には、辞書を購入する必要があります。
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この記事の執筆者

関山健治(せきやま けんじ)先生写真

中部大学 准教授

関山健治先生

沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。

著書に『辞書からはじめる英語学習』(2007年、小学館)、『英語のしくみ』(2009年、白水社)、『日本語から考える!英語の表現』(共著、2011年、白水社)、『英語辞書マイスターへの道』(2017年、ひつじ書房)などがある。

執筆・校閲者として『ウィズダム英和辞典(第3版)』(三省堂)、『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』(小学館)、編集委員として『ベーシックジーニアス英和辞典(第2版)』などを担当。

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