【辞書コラム⑲】辞書の使い方

「終わることば」「含むことば」を使って、辞書で遊んでみよう!

#初級

「終わることば」「含むことば」を使って、辞書で遊んでみよう!

単語の「しっぽ」に注目しよう

DONGRIをはじめとした電子辞書は、単に紙の辞書がコンピュータ上で速く引けるだけでなく、電子辞書でしかできない使い方もできます。前回はその例として、意味の似た単語の使い分けを調べるときにDONGRIの「例文を調べる」という検索モードを使う方法をお話ししました。今回は、DONGRIならではの検索方法の2回目として、「終わることば」モードを使ってみましょう。

リスニングの練習でDONGRIを使ってみよう

先日、紙の辞書を使っていた学生から、リスニングをしていて「ラクーンドッグ」と聞こえる語が何回も出てきたけど、「ドッグ」がdogであることは分かっても、先頭部分の「ラクーン」が分からないので辞書が引けないという質問がありました。紙の辞書は、生まれてから何百年という歴史がありますが、最新の辞書であっても単語の先頭部分の綴りが分かっていないと引くことはできません。

電子辞書を使えば、単語の末尾から引くという、紙の辞書では不可能であった検索が簡単にできます。DONGRIでは、検索モードを選ぶメニューから「で終わることば」を指定すると、入力した文字列で終わる単語が表示されます。

「終わることば」

先ほどの「ラクーンドッグ」の場合、ジーニアス英和辞典で「で終わることば」を選んでdogを入れると、dogで終わる語がアルファベット順に表示されます。「ラクーン」という音から、lかrで始まる語だろうと見当をつけてlやrで始まる語を探すと、raccoon dog(タヌキ)であることが分かります。

raccoon dog

単語が完全な形で印刷されている文法問題や長文問題と違い、リスニング問題では単語の一部分の綴りが分からないことは珍しくないため、今まではリスニングの勉強をする際に辞書を使うことは一般的ではありませんでした。DONGRIを使いこなせば、受験勉強だけでなく、洋画を観ながら耳慣れない単語を調べることもでき、辞書を使って英語にふれるのが楽しくなることでしょう。

「仲間のことば」を見つけてみよう

「終わることば」モードは、リスニングの勉強だけでなく、単語量を増やすときにも役立ちます。先ほどの例のように、語末がdogで終わる語を検索すると、raccoon dogを含めて57語見つかります。多くは、police dog(警察犬)や Seeing Eye dog(盲導犬)といった働く犬の名前や、Labrador dog(ラブラドルレトリーバー)のような犬種に関する語です。英語では、2語以上の語は語末に意味の中心となる語がくることが多いため、「終わることば」モードで単語を入れると、その語の「仲間」がたくさん見つかります。とくに、化学や生物など、他教科で学ぶ専門用語をまとめて調べるときは、「終わることば」モードはとても便利です。

たとえば、化学の授業で学ぶ「シャルルの法則」は英語では何と言うのでしょうか? 「法則」はlawですので、lawを「終わることば」モードで検索してみましょう。

「終わることば」でlawを調べる

lawで終わる語を機械的に拾っているので、中にはclaw、 cole slaw、 flawのように「法律、法則」とは関係ない語も出ていますが、1つ1つ見ていくと、Charles’ lawであることが分かります。「シャルル」はフランス人の名前ですが、英語式に発音すれば「チャールズ」になるのですね。

そのほかにも、acidを入れれば、acetic acid(酢酸)やcarbonic acid(炭酸)など、「酸の仲間」が数十語検索されるなど、様々な使い方ができます。中学校の理科で習うような基本的な物質名でも、英語で何と言うかを知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。皆さんの中には、交換留学で英語圏の高校へ行き、英語で様々な教科を学んだり、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)のプロジェクトなどで、英語以外の科目で学習した内容を英語で発表する機会のある人もいるかもしれません。このようなときに、DONGRIの様々な検索機能が役立ちます。

和英辞典に載っていない単語でも調べられる

皆さんの中には、和英辞典を使って調べたい日本語をそのまま検索したほうが早いのではないか、と思う人がいるかもしれません。たしかに、「酢酸」や「炭酸」といった基本的な物質名は、『ジーニアス和英辞典』などの、英和辞典とセットでインストールされている和英辞典にも出ていますが、和英辞典は英和辞典よりも収録語数が少ないので、英和辞典に出ていても和英辞典には載っていない語は珍しくありません。「シャルルの法則」がその例ですが、このようなときには、英和辞典の「終わることば」モードのありがたみを感じます。

「含むことば」モードを使ってなぞなぞを作ってみよう

最後に、電子辞書専用機など、他の電子辞書ではほとんど見られない、「含むことば」モードをご紹介します。

これは、単語の先頭や末尾に加え、単語全体から入力した文字列を含む語を検索する機能です。「始まることば」「終わることば」よりもヒットする数は多くなりますが、使いこなせばより深く英単語を調べることができます。

たとえば、「含むことば」モードでlionを入れてみてください。millionaire(百万長者、大金持ち)のように、猛獣のライオンとは全く関係のない、偶然lionが綴りの中に含まれる語も検索されます。

「含むことば」でlionを調べる

これを応用すれば、DONGRIを使って英語のなぞなぞを作ることもできます。たとえば、What is the richest animal in the world?(もっともお金持ちの動物は?)と聞き、(millionareの綴りの一部なので)lionを答えにするようなものです。単語の先頭や末尾と違い、単語の中に別の単語が含まれていると気づきにくいので、難しいなぞなぞを作ることもできます。

「辞書で遊ぶ」ことで英語力もアップ!

私の授業を受けている大学生を見ても、最近はスマホの無料辞書や翻訳アプリで済ませ、きちんとした辞書を全く使ったことがないという人が増えています。
DONGRIは、定評のある紙の辞書の情報のほとんどすべてを収録した本格的な辞書アプリであり、教科書に出てくる単語の意味を調べるといった基本的な使い方だけでなく、使いこなせば従来の紙の辞書や電子辞書専用機ではできなかった引き方もできます。勉強のために(仕方なく)辞書を引くのでなく、たまには辞書を使って遊んでみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者

関山健治(せきやま けんじ)先生写真

中部大学 准教授

関山健治先生

沖縄大学専任講師、准教授を経て、2014年から中部大学准教授。専門は英語辞書学・応用言語学。

著書に『辞書からはじめる英語学習』(2007年、小学館)、『英語のしくみ』(2009年、白水社)、『日本語から考える!英語の表現』(共著、2011年、白水社)、『英語辞書マイスターへの道』(2017年、ひつじ書房)などがある。

執筆・校閲者として『ウィズダム英和辞典(第3版)』(三省堂)、『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』(小学館)、編集委員として『ベーシックジーニアス英和辞典(第2版)』などを担当。

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