Qulmeeで扱う発音記号
Qulmeeの発音記号について
1Qulmeeの発音判定はアメリカ英語の発音をベースに発音評価を行います。
単語を構成する音素(発音の最小単位)ごとに、正しく発音できているかを判断し、ひとつずつフィードバック(音素フィードバック)を確認できます。
2音素フィードバックはIPA(国際音声記号)で表示されます。そのため、辞書に載っている発音記号と異なる場合があります。Qulmeeでは、音声の正確さを判定するため、長音記号「ː」やアクセント記号(強勢記号)は使用していません。
長音かどうかやアクセント位置は、お手本の音声をよく聞き、必要に応じて辞書で確認してください。一方、辞書は学習者にわかりやすく発音を示すことを目的としており、見慣れたアルファベットに置き換えたり、長音記号やアクセント記号を付けて、発音のニュアンスや強勢を理解しやすくしています。
3音素の説明は、学習者にわかりやすい表現を優先しています。そのため、音声学的に厳密な説明とは異なる場合があります。
4発音判定エンジンに登録されていない単語(特に名前や固有名詞、地名に多い)は綴りから想定される音素で判定されます。
この場合、音素フィードバックで正しい音素が表示されないことがあります。
Qulmee 発音記号一覧
ここでは、Qulmeeで使われる音素表記と、一般的な辞書で使われる発音記号の違いを整理し、それぞれの対応関係を一覧で紹介します。
英語の音は、大きく「母音(vowel)」と「子音(consonant)」に分けられます。
母音は、口の中で空気の流れが妨げられず、スムーズに出る音です。舌や唇の形を変えることで音が変わりますが、空気は止まらず、声帯は必ず振動します。母音はそれだけで音節を作ることができます。
子音は、空気の流れが舌・唇・歯などによって一時的に止められたり、狭められたりして出る音です。声帯が振動するもの(有声音)と振動しないもの(無声音)があります。子音は通常、母音と組み合わせて音節を作ります。
1母音一覧
母音では「カテゴリ」(短母音・長母音・二重母音など)について補足します。
Qulmee 音素表記 |
辞書 表記例 |
母音 カテゴリ |
単語例 | 備考 |
---|---|---|---|---|
ɛ | e, é | 短母音 | end, head, next | |
æ | apple, bag, hand | |||
ʌ | up, but, enough | 基本的に語頭、語中にのみ出現し、語末では使われません。 | ||
ɑ | ɑ, ɑː | option, box, father | アメリカ英語での発音は「長母音・短母音」の区別が曖昧で音質が重視されます。ここでは短母音として定義します。 | |
ʊ | u | book, look, push | 基本的に語中にのみ出現し、語頭、語末では使われません。 | |
ə | 弱母音 (短母音) | ago, success, sofa | 英語で最も頻繁に使われる弱母音で、強勢のない音節に現れます。 | |
ɪ | i | 短母音 | is, sit, middle | |
i | i | 弱母音 (短母音) | happy, movie, study | 強勢のない音節に現れます。 特に語末に「-y」や「-ie」となる場合に多く見られます。 |
iː | 長母音 | eat, dreem, see | ||
ɔ | ɔː | August, ball, walk | ||
u | uː | good, room, new | ||
eɪ | ei | 2重母音 | eight, name, day | |
oʊ | ou | old, cold, go | ||
aɪ | ai | ice, mine, high | ||
aʊ | au | our, down, now | ||
ɔɪ | ɔi | oil, join, boy | ||
ju | juː | 半母音 +長母音 | use, cute, view | j + u はひとまとまりの母音として扱われる特別な組み合わせの音です。 語頭に多く現れます。 |
ɪɹ | iər | r音声母音 | ear, serious, near | |
ɛɹ | eːr, eər | air, careful, share | ||
ʊɹ | uər | poorly, cure, tour | ||
aɪɹ | aiər | iron, fireplace, require | ||
aʊɹ | auər | our, powerful, flower | ||
ɔɹ | ɔːr | origin, pork, door | ||
ɑɹ | ɑr, ɑːr | art, start, car | ||
ɝ | əːr | early, bird, her | 強勢のある音節に現れます。 | |
ɚ | ər | forget, clear, winter | 強勢のない音節に現れます。 |
補足:「r音声母音」について
「r音声母音」とは、母音の後に英語特有の“r”の響き(IPAでは /ɹ/)が滑らかに加わることで生じる音で、英語の母音と子音のつながりを自然にする重要な発音現象です。
「r」は独立した子音として発音されるのではなく、母音に重なるように響きが加わります。この現象を「r音化」と呼び、アメリカ英語で特に顕著に現れます。
Qulmeeでは、この独立性のない響きを表現するため、音のカタカナ表記では (ル) のように括弧付きで扱います。
たとえば「bird」「learn」「teacher」といった単語では、「アー(ル)」「ア(ル)」のように一息で発音することで、英語らしい滑らかな響きが生まれます。
2子音一覧
子音では「有声音(voiced)」、「無声音(voiceless)」や「発音ペア」について補足します。
「発音ペア」とは、口や舌の動き(調音方法と調音位置)が同じで、声帯を響かせて使う(声になる)かどうかの違いによって有声音・無声音が区別される音の組み合わせです。
Qulmee 音素表記 |
辞書 表記例 |
有声音 ・無声音 |
分類 | 単語例 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|
w | 有声音 | – | 半母音 (接近音) | will, away, swit | 母音に似た響きを持ちますが、子音として働く半母音です。 | |
j | 有声音 | – | yes, cure, onion | 母音に似た響きを持ちますが、子音として働く半母音です。 ju を除き、それ以外は通常の子音 /j/ +母音として扱われます。 | ||
p | 無声音 | 発音ペア | 破裂音 | pen, happy, sleep | ||
b | 有声音 | big, about, club | ||||
t | 無声音 | 発音ペア | teach, study, best | |||
d | 有声音 | deep, today, good | ||||
k | 無声音 | 発音ペア | kind, lucky, black | |||
g | 有声音 | goal, ago, bag | ||||
m | 有声音 | – | 鼻音 | make, simple, home | ||
n | 有声音 | – | not, snow, run | |||
ŋ | 有声音 | – | singer, hungry, swing | |||
f | 無声音 | 発音ペア | 摩擦音 | find, before, half | ||
v | 有声音 | voice, heavy, move | ||||
θ | 無声音 | 発音ペア | thing, birthday, tooth | |||
ð | 有声音 | they, feather, with | ||||
s | 無声音 | 発音ペア | city, lesson, place | |||
z | 有声音 | zoo, busy, size | ||||
ʃ | 無声音 | 発音ペア | shine, station, push | |||
ʒ | 無声音 | pleasure, visual, beige | ||||
h | 無声音 | – | 声門摩擦音 | help, hope, behind | 母音の前でのみ現れ、実質的に母音の呼気音化として機能します。 | |
tʃ | 無声音 | 発音ペア | 破擦音 | change, teacher, lunch | 複合子音(affricate)であり、/t/+/ʃ/ や /d/+/ʒ/ のように分解されることがありますが、通常は一音素として扱います。 | |
dʒ | 有声音 | just, enjoy, age | ||||
l | 有声音 | – | 側面接近音 | light, close, cool | ||
ɹ | r | 有声音 | – | 接近音 | right, run, cry | 母音の前後で音価が変化し、母音化(r-coloring)する場合があります。 |
補足:声帯を響かせて使う(声になる)とは?
発音ペアで語頭にくる単語をピックアップし、片手で耳を塞ぎ、もう片手で喉に手を当てながら交互に発音すると、その違いを体感しやすくなります。
母音はすべて有声音になるので、言い出しから喉が振動するかどうかを感じてみましょう。
たとえば、find と voice、city と zoo などのペアで試してみてください。