音読コラム①

音読の効果を生徒に実感させる授業づくりとは?

安木真一先生の音読指導法コラム:音読の効果を生徒に実感させる授業づくりとは?

 英語の授業の中で、音読を効果的に取り入れたいと考える先生は多くいらっしゃいます。けれども、授業で音読に取り組むと「生徒が受け身である」「目的がはっきりしないと生徒は消極的」などのお悩みを抱える先生方もまた多いようです。生徒が効果を実感しながら主体的に音読に取り組むためには、目標とするアウトプットから逆算して授業を組み立てることが大切です。今回は、音読の効果・目的と、音読を取り入れた授業づくりのポイントを解説します。

音読の効果・目的とは

 どんなに教師が一生懸命音読を取り入れようとしていても、生徒はその必要性や効果を実感できていない場合があります。まずは、音読の以下の目的を生徒に語れるよう、教師自身が理解する必要があります。

音読指導の目的 [安木;2022より一部抜粋]
①スピーキングにつなげる
 徹底的な音読の後で様々な手法を使って「発表」「やりとり」のスピーキング活動を行う。
②単語認知を自動化する
 文字を見て瞬時に意味がわかる力をつける。これにより、リーディング力の向上をはかる。
③学習事項を内在化する
 学習した単語、熟語や構文、英文、内容を取り込む。
④内容理解につなげる
 理解が難しいと感じたとき、英文を音読することで内容理解を助ける。
⑤英語の音韻システムを獲得する
 音素・単語・プロソディー(イントネーションやアクセント)などの音韻システムを獲得する。
 これにより、リスニンング力が向上する。
⑥英文を前から理解する力を育成する
 英文を読んで、前から意味をとることができるようになる。

 しかし説明だけでは、生徒が効果を納得することは難しいでしょう。生徒が音読の効果を実感できるのは、目的①にあるスピーキングまたはライティングなどのアウトプット活動で英語力の高まりを感じられたときです。つまり、目標はアウトプット活動であり、音読練習はそれを高めるための手段であるという見通しが大切です。そのため授業では、まずゴールとするアウトプット活動を定め、そこから逆算して効果的な音読やを選択することが必要です。
 では、アウトプット活動を目指すためには、どのような段階で途中の活動を設定し、授業づくりを行う必要があるでしょうか。

音読を取り入れた授業の流れ

 第2言語習得の大原則は、大量のインプットと少量のアウトプットです。授業中には同じ教材を何度も繰り返すことで内容や英語をインプットする必要があり、その後アウトプット活動を行う必要があります。しかし、聞いたり読んだりするインプットだけでは、英語を十分に取り込むことはできません。英語を取り込む(内在化する)には音読などのインテイクの活動が必要になります。またこのインプットは学習者のレベルにあったものであることや、理解を深めるものであることが大切です。これを図示すると以下のようになります 。

安木先生コラム1

 つまり、音読は教材の本文理解を深めると同時に、そこでの学習をアウトプットの活動へと架橋する重要な過程であると言えます。到達すべき目標のアウトプットを定め、そのために必要な音読や内容理解の過程を設定していきましょう。今回は、1時間の授業の中に上記の3つの過程を盛り込んだ音読の進め方を紹介します。

安木先生コラム2

安木先生コラム3

 今回は、アウトプットを目指した授業の流れについて説明しました。アウトプットの目標を生徒と共有し、その目標に到達するために逆算して途中の活動を設定すると、生徒は活動の目的がわかり、音読へのやる気を高めることができます。
 次回は、さまざまな音読練習のアイデアを紹介したいと思います。

この記事の執筆者

安木真一先生写真

京都外国語大学・短期大学 教授

安木真一先生

鳥取市出身。大阪、東京、鳥取の公立私立の中学校及び高等学校、岡山の高専勤務を経て、2016年より現職。京都外国語大学・短期大学で、英語科目と教職科目、大学院で英語教育学演習科目を担当。

 研究分野は英語教育実践学(音読を中心にした指導法の研究、スローラーナーへの指導法の研究、受験指導とコミュニケーション指導の両立に関する研究)。

■主な著作
『英語力がぐんぐん身につく!驚異の音読指導法 54』 明治図書 2010年
『\スピーキング力に差がつく!/英語アクティブ音読「超」指導法』 明治図書 2022年
『スローラーナーを取り残さない 英語のつまずき「超」指導法』 明治図書 2023年

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